「イシマルです。今、着いたんだけど、どこに行けばいいですか?」 「はい待っててください、いま行きます」
と言って電話が切れた。
先日、神奈川県のとある山の中の森林公園らしき施設で、
映画のロケがあった。
地図をたよりに、入口らしき所までたどり着いた。
いかにも広そうな所で、集合場所が定かでない。
入口すら何か所もある。
やむなく、制作の方の携帯に電話した。
それが、冒頭の喋りである。
彼は、私がどこにいるのか訊かなかった。
5分ほどしてリダイヤルがかかってきた.
プルルル~
「イシマルさん、いまどこにおられますか?」
「うん、そうくるよネ、○○の看板のパーキング」
「すぐ行きます」
また電話が切られた。
彼は、私の車の車種とか色とか訊かなかった。
まわりに沢山車が止まっているというのに・・・
おっちょこちょいと言われる人は、落語の世界では、
与太郎などと名指しされ、ある意味可愛がられている。
しかしそれは、あとになって、こうやってお話しになってしまえばのこと。
当日の当事者としては、困ったモノなのである。
暫くすると、与太郎君は私の車の前を、すっとんで通り過ぎ――
プルルル~
「イシマルさん、今日はどんなお車で?」
彼が、携帯電話のない時代に生まれていたとしたら、
どんな与太郎ぶりをみせてくれたであろうか?
それとも、その時代の方が彼には合っているかもしれない。
意外と、私など頭があがらない立派な青年であるかもしれない。
少なくとも、君の誠意だけはガンガン伝わってくる。
「あ~こちらだったんですね、ボクの車についてきて下さい」
と、前を先導して、道の先の狭い駐車場に入り込んだ。
「バックオーライ、バックオーライ」
(ネェもしもしぃ、君の車が邪魔で、入れられないんだけんど)
「はぁ~いオッケーです、入りました、あっごめんなさい
ボクの車が出せないので、一度出てもらって・・・・・」

彼は、我が道をゆく監督向きかも