お芝居の旅ってえのは、つれえもんで、
今日は盛岡 明日は静岡、そういやあ、その前は
広島に行きましたっけねえ。
ってな具合に、言いかえれば「津々浦々家業」
なんですな。
この津々浦々が、これ又、
酒はうまいは
しこたま
飲めるは、こんなつれえことはありやせん。
なにしろ、ひと巡業につき
実働2時間!
これしか働かしてもらえねえんでござんすから。
あとは、「おめーたちの好きなようにしな・・」
ってえんですから、
せちがらい世の中ですなあ。
しょうがねえからってえんで
あっしら、馬鹿役者どもは、あてどもなく
街を徘徊し、ほうぼうの
提灯にごやっかいに
なってる次第でござんす。
ほうぼうったって、夜中ともなりやすと
提灯も火の節約ってんで、明かりを消しますわなあ。
そうすると、しんそこの馬鹿役者が、
燃えカスのような提灯を、ウチワであおぎながら
徘徊するんですわなあ。
『
あらよっと、じゃまするぜ、おかみ』
「
あの世っとの間違いじゃないの、もうおしまいだよ」
『おっ、いい色合いの提灯だねえ、よせてもらうぜ』
「旅の人!あれは朝陽だよ」
しょうがねえからってんで
旅篭に帰って、
たくわんつまみに
あさげ・・じゃなかった
あさしゅを
頂くわけですなあ。
ああつれえつれえ。
なにがつれえかって、それから、
しこたま眠らなきゃならねえんですなあ。
そんで可哀相な事に、目が覚めたとたんに
トンカツなーんてものを、山盛り飯おかわりで
食わなきゃならねえ。
これがまたボリュームたっぷりで、
サービスとやらで、小ラーメンとかも付いて来たりして、ああつれえ。
そんでよしゃあいいのに、
名物などという張り紙に
騙されて、餃子を注文する馬鹿がいるもんだから
つれえったらありゃしねえ。
しかも、こんだけ食って、820円もとられるんだから
この世も末だね。
ああまっとうに生きたいやね。