《昼間っからビールが飲めない》
夕食ではなく、昼間にビールが飲めないのである。
昼飯に、「生ビール下さい」と注文する方がおられる。
実に、うらやましい。
昼間にビールが飲めるなんて!
この飲めるというのは立場上飲めるとか、状況が飲めるとかではなく、
飲める体質と云うのが、このお話し。
私はアルコールに弱いとは思えない。
晩酌では、ビールや日本酒、ワインに紹興酒と、グビグビのんでいる。
しかし、昼間は別物なのだ。
何か悪い経験をしたのかと問われても、そんな記憶はない。
単に間食ならぬ、間飲ができないのだろうと推測する。
ビールとは、舌と身体と心で味わう。
三つで味わっている。
その中の、心の部分がどうやら抵抗しているらしい。
「昼間とは仕事中だろ」という罪悪感ではないようだ。
その証拠に、他の人が昼間に飲んでいるビールには、文句はない。
むしろ、羨ましさがまさっている。
以前、ゴルフを始めた30代の頃、一緒に回る友人が、ランチに、
当たり前のように生ビールジョッキを注文した。
(えっ、まだハーフラウンド残っているのに・・)
スポーツをしているのに、ビールが飲めるなんて!
驚いたものだった。
付き合いという事で、知らない間に注文されたビールジョッキを、
やむなく傾けたのだが、やはり、後半のスコアは散々だった。
以前、旅番組で、お世話になった家で昼ご飯をごちそうになった。
田舎では、昼間でも、接待にはビールの栓が抜かれる。
シュポッ
「どうぞ」コポコポコポ
やむなく、ちょこっとだけ口を付けたら、
「どうぞどうぞ」
まだ一本目がほとんど残っているというのに、2本目を抜く。
「どうぞどうぞどうぞ」
午後の撮影が夜遅くまであるので、アルコールは身体に入れたくない。
「いける口になんでしょ、どうぞどうぞ」
チョビチョビ舐めていると、泡の分減ってしまう。
目の前には、3本のビールが並んでいる。
摂待とはそうしたものだと分かっていても、とても飲めるものではない。
現代であれば、
「すみません、このあと車を運転しなきゃならないもので・・」
言い訳ができるが、昔は、その言葉を吐いても、
「どうぞどうぞどうぞ」
ご主人から継ぎ足される。
一度、「下戸なもので」とウソの言い訳をしたのだが、
まったく耳に入らないかのように、
「さ、どうぞどうぞどうぞどうぞ」
「医者にとめられておりますので・・」
「さ、さ、どうぞどうぞどうぞどうぞどうぞ」
仕事が終わってしまえば、「どうぞ」は大歓迎なのだが、
なぜか、昼間はまったく飲む気がしない。
飲んでしまうとどうなるか?
ほとんど役に立たないヒトとなる。
夜であれば、けっこう陽気になって、何時間でもワイワイやっているが、
昼間はほんの一杯のビールで、やる気のないダメ人間に成り下がる。
心の問題だけではないのかもしれない。
そういう体質を、自らが育てたのかもしれない。
昼間どころか、昨日の早朝、羽田空港の蕎麦屋で、
ビールで乾杯するおいちゃんグループがいた。
うらやましいを通り越して、心配になる。
あのアトどんな気分になるのだろう?
昼は昼で、乾杯をするのだろうか?
そして夜も—―
うらやましくは・・・・・・・・ない。

中津からあげ