大分県の日田(ひた)市は、水郷の町である。天領と言われる町の中心をおおきな川が流れる。
堰があり、夕方になると屋台船が川にこぎでる。
遊覧船である。
朝にはモヤがたちこめ幻想的な風景となる。
時に台風などで水害もおこる。
長い歴史の中で、水との戦いを繰り返してきた。
その分、水は豊富で美しく、日田杉を育て、
旨い酒をはぐぐみ、温泉も当然のように噴き出て、
情緒たっぷりの小さな町となった。
1歳の頃住んでいたのだが、当然記憶はない。
両親が話してくれた日田の良さだけが残っている。
ときおり訪ねると、町の落ちつきかたが好きになる。
日田を訪れて、頻繁に食べるのが、
《日田焼きソバ》
想夫恋(そうふれん)という店の創業主が始めたヤキソバの作り方が、
特種で、次第にその魅力にはまった客たちの、口コミでひろまった。
いまでは、日田市内に20数件の店が、
日田焼きソバを食べさせてくれる。
などとノドボトケを動かしながら、宿の客室の窓から、
早朝の川面を眺めている。
朝風呂から帰ってきたばかりだ。
さきほどロビーに降りてみたら、そこにピアノが置いてあった。
誰もいないので、椅子に腰かけた。
フタをあけた。
鍵盤に触れる。
静かに、いつもの曲を弾きだす。
窓の外には、月の光ならぬ、霧の川。
6分間の至福のひととき・・・
引き終わると、後ろから小さな拍手。
誰もいないと思ったら、いつのまにか、宿泊客が数人、
つたないピアノの響きに耳を傾けてくれていたらしい。
ありがとうございます。
そそと立ち去る。
ホテルにはピアノが置いてある所もある。
しかし、ヘタクソが弾くのも耳汚しかもしれないので、
なるべく人が居ない時を狙っている。
さて出かけて、日田焼きソバを探しますか?