沖縄本島の最も高い山はどこ?沖縄県のもっとも高い山という問いには、石垣島が手をあげる。
《於茂登岳》おもとだけ 526m
しかし、本島となると、標高が少しだけ低くなる。
《与那覇岳》よなはだけ 503m
いかいでか!
イシマル向かった。
飛行機とレンタカーを駆使した。
那覇空港から、二時間。
登山口は、389mの地点だった。
あと標高差100mちょっと登ればいいのだと、安易に考えた。
登り始めは、だらだらと横歩きを続ける。
南国のジャングルの中を進む。
ヘゴの樹が不気味に林立している。
ヘゴとは、古生代の恐竜を描くときに、樹木として、
登場するシダの化け物みたいなヤツである。
幹の部分に、斑点のようなものが全身を包んでおり、
ある意味不気味である。
ジュラシックパークの常連と言えよう。
登っているのは、土曜日。
なのに登山者に出会わない。
時間が遅すぎたようだ。
とにかく頂上をめざした。
そして、頂上に出た。
出たものの、眺望はない。
8畳ほどの平地があるだけのテッペンである。
周りは樹木と笹の林に囲まれている。
テッペンで沖縄のすべてを見おろしてやろうと、
意気込んでいたのだが、その気持ちには応えられなかった。
しかし、その場所がとても気に入った。
まるで子供の頃に作った《われが陣地》だったのだ。
笹に囲まれた陣地!
そこに道をいくつも造り、アチコチにつなげ、
隠れ家のような陣地にしている。
っと、頂上で興奮している時に、ハタと気づいた。
よく見てみた。
頂上の八畳のヒラ地には、道が4本あった。
・・・・・・・しばし、言葉がなくなった。
私は、どの道からあがって来たのだろう?
4本の道はそっくりである。
いずれも笹のトンネルをもっている。
登って来た瞬間は、頂上に着いた喜びで、
興奮のあまり跳んで跳ねた。
(跳んでも跳ねたも同じ漢字を使うことに、いま気づいた)
周りを見ようとグルグル回った。
まさか、道が分からなくなるなど考えてもいなかった。
4本も頂上に道があるとも思わなかった。
思ったとしても、そっくりとは考えなかった。
はて・・・どれだろう?
映画のサスペンスミステリーの、ワンシーンである。
(映画《キューブ》を思い出した)
ジッと考え込んでいる。
この日は、曇り空で太陽が出ていない。
仮にコンパスと地図を取りだしても、
4本の中で、却下される道は、1本だけだろう。
「そうだ!足跡(靴跡)を見てみよう」
見てみた。
枯れ葉が大量に落ちており、跡はない。
「そうだ、着いた時、ストックを放りなげたじゃないか!」
落ちているストックを見てみた。
散らばっている。
辿りついた地面に置いていれば、そこが正解の道だと、
分かった筈なのに、
放り投げるというおバカな行為の為、
意味のない散らばり方をしている。
「そうだ!」
三度目の「そうだ!」を発してみたものの、
状況を打破する糸口は、なにも見つからなかった。
しょうがない、いつもの《しらみつぶし》戦法に移行する。
まず、《たぶんこの道》を降りてみる。
降りる前に、ストックを1本、降り口に置いておく。
すると・・・
1分もしないうちに、登山道に落ちている白いマスクを見つけた。
ポケットを探ってみる。
ない!
今日は誰も登っていない。
マスクの折り曲げ方も私のクセのままだ。
正解の道を、マスクが教えてくれた。
喜びいさんで降り進んでいる時に、ハタと額をたたく。
「あっ、ストックを忘れた!」