「脂がこころもとない」最近、鯖に対してもらした言葉である。
シメサバをこしらえている。
長年いきつけの魚屋で買い求めた目の青々をしたサバ。
サバいて塩を振り、酢で〆る。
作っている最中に、身をなでてみる。
脂が足りない。
あきらかに身の脂が指につかない。
包丁に付着する脂が少ない。
実際、こしらえたシメサバを食べてみると、
旨さにコブシを振るほどの脂ののりがない。
たまたまこのサバが、脂が少なかったのかと、
諦めていたのだが、この数年度重なるシメサバ制作で、
圧倒的な、脂の少なさに嘆いている。
ひょっとすると、海水温の上昇が影響しているのか?
海が寒くなければ、からだの脂は必要ない。
保温効果の脂がのらなくなる。
熱くなれば、人間が服を脱ぐように、
サバが服を着たくなくなっている。
とはいえ、微妙な脂の減少だ。
科学的でない指先の感覚と、食べた時の舌の想いに過ぎない。
過ぎないが、不安である。
噛んだとき、脂が噴き出てシャツを汚してしまう心配を、
しなくなるのが哀しい。