ホテルの朝食バイキングを食べる機会が多い。普段、自宅の朝食が圧倒的なのだが、外食の朝食となると、
バイキングとなる。
ほとんどのホテルや旅館は、押しなべて同じ形式である。
卵料理、魚、肉、スープ類、サラダバー、デザート、飲み物。
パン、ご飯。
時に、ご当地料理が混ざり、イベント料理なんてのもあったりする。
朝カレーも増えてきた。
今は、マスク置き場、ナイロン手袋、体温測定、手消毒。
それぞれが離れて透明ボード越しで食べている。
許される所では、テラス朝食がいい。
食後、さわやかな空気の流れを感じ、満腹の腹をさすりながら、
ミルクコーヒーをのむ。
目の前にひろがる青い海を眺めていると、ふと立ち上がる。
どこへ行くのかと思いきや、手袋をはめ直し、
コーンフレークをガサッと皿に入れ、
ミルクを注ぎ込んで、戻ってくる。
戻ってきたのに、スプーンを忘れた事に気づき、
もう一度向かった先で、なぜか、
クロワッサンを摘まんで帰って来る。
食事には余韻というものが大切である。
ボ~としているひとときと言えよう。
そのボ~の隙間に、なにかを摘まもうとしている。
本人は、それが食事だと気づいていない。
コーンフレークやクロワッサンは余韻の類いだと、
思い込んでいる。
先ほど、さすった腹に、すきまを感じたのだろうか。
すきま風を防ぐ、薄いフワフワした断熱材の代わりが、
コーンであり、クロワであるようだ。
そういえば、「本日、納豆が全部出てしまいまして・・・」
係りの者に言われた。
ということは、腹の中の納豆が入るべくスペースが埋められていない。
高性能のたんぱく質を、同量調達しなければ・・・
ミルクコーヒーのカップをいったん置き、手袋に手をさしこむ。
すべて見たハズの料理の列を探査してゆく。
小惑星探査機のように、静かにすばやくセンサーが働く。
「かぎとる」という表現が正しいかもしれない。
卵関係は、間違いなく大量接種済みであるので、パス。
肉関係も同様。
魚――パス。
ん・・・マカロニ?
さっき無かったのに、いつの間に追加されたのだろうか?
そうか、さっき、ここは空のトレイが置かれてあった場所だ。
絶大な人気の為、取り尽くされていたのか!
ホワイトクリームにまぶされたマカロニが上部を焦がされて、
「いかにも旨そうな色とツヤ」を出している。
ん・・・まてよ?
これは、高タンパクな納豆の代替品として成り立つのか?
ほとんどデンプンではないか?
しかし、この迷いは、「いかにも旨そうな」という形容詞が、
すべてを覆いつくしてくれる。
ガッポリ!
なぜかこのトレイの所にあるスプーンは大きい。
レストランの「いくらでもどうぞ」との度量を感じる。
(原料安いんで)の言葉が暗に込められている。
(できることなら、最初にコレを食べて腹を膨らませて)も感じる。
なのに、最後の最後にガッポリはいかがなものだろうか。
「ワタシはデザートが楽しみなんですヨ~」
バイキングの楽しみを語る女性がいる。
なのに、私のラストデザートは、マカロニがっぽり!