もし、神様がいて、
「アナタの身体の一部を、取り替えてあげます」
と言ってくれたら、何を取り換えたいですか?
この質問をすると、真っ先に手をあげるのは、
オイちゃん達である。
「はいはい、肝臓を換えてください!」
おそらく、この方は、酒問題で悩んでいると思われる。
「昔は、朝までとことん呑んだもんだヨ」
という酒飲み伝説を、背中にしょいこみ、
あの若々しい日を再びと狙っている。
遅れまいと手をあげるのは、やっぱりオイちゃんである。
「胃袋、とっ換えてくださいな」
声が少しちいさい。
最近というか数年前から、食が細ったらしい。
朝飯も、食ったり食わなかったり。
昼飯は蕎麦をちょこちょことついばみ、
夕食は、ため息のうちに終わってしまう。
夕食に2時間もかけていた往年の輝きを想い出としている。
もう一度腹いっぱい食ってみたい!
《ヤングマントンカツカレー》をライス大盛りで喰らってみたい!
その為には、新鮮なあの日の胃袋が欲しい!
「め!」
大きな声で、「め」、と声を出したのは、
メガネをかけた、やっぱりオイちゃん。
見えないから、うっとおしいと嘆いている。
テレビも見えない、本も見えない、スマホも見えない、
アナタも見えない、星なんか見えるかい!
新聞は読むものではなく、視るものだとやっと気づいたそうだ。
酒が呑めなくてもいい、
ごはんをバクバク食べられなくてもいい、
ただ、目でそれらをしっかり見たいんだヨ!
《ツヤツヤの目じり》
なにを犠牲にしても、コレが欲しいと、
目を煌めかせているのは、間違いなくあの方たちである。
オバちゃんと言ったら怒られるので、女性たちと言い換える。
一般論に置き換える。
オイちゃんの内臓派にくらべて、表面をなんとかして欲しい、
と両手を合わせている。
その中で、目じりというピンポイントに照準を合わせている。
この懇願を受けた神様とて、
(そんなちいさな部位でいいのじゃろうか?)
困惑するかもしれない。
(あとで、おなかも凹ましてとか言われても知らんヨ)
「いいのいいの、目だけパッチリしてもらえれば」
願いという意味では、オイちゃんたちをはるかに凌駕している。