《シャクシャイン》アメリカの先住民族の酋長の名前である。
名前の響きが、美しい。
その名がつけられた場所が、ある。
先日、クライミングで訪れた神奈川県の幕岩だ。
幕岩には、クライマーたちが、40年以上の歴史の中で、
様々なルートを切り開いていった。
切り開くとは、誰も登ったことのない岩壁を、
手と足だけで登り切るのである。
フリークライミングとは、登る為の器具を使わずに、
人間の身体だけを使って登る遊びである。
とはいえ、途中で落っこちると、死んでしまうので、
テッペンに、確保点という金属を打ち込み、
そこにロープをかけて自分につなぎ留め、落下防止だけをして登る。
18年ほど前、たくさんあるルートの中で、果敢に挑んだのが、
《シャクシャイン》と名付けられたルート。
難易度を表す表記は――《11,a》
(イレブン、エー)と読む。
高さは、18mほど。
ほぼ垂直の岩塊。
初級者には、近寄りがたく、上級者には、なんてことないルート。
その中間の私は、
NHKの教育番組《熱中時代》のスタッフに来て貰った。
どうせならチャレンジを記録したかったのである。
一回目のチャレンジ。
中間部の難所で、落下した。
落下とは失敗という意味で、岩場に叩きつけられる訳ではない。
ロープに支えられ、ブランブランとなる。
NHKのドキュメントは、しつこく私に付きまとう。
どうしても登ろうとする私を自宅まで追っかけて来る。
さらには、クライミングの国体予選に出場する私を撮る為に、
埼玉県の加須市の大会を追いかける。
追いかけたものの、一回戦で消えてしまったイシマル。
実力とふるいたつチャレンジのココロは、
必ずしも一致していないようだった。
諦めきれない私は、クライミングの友人に助けを請う。
ミヤボ君というエキスパートである彼が、登り方を教授してくれた。
しかして、2回目!
多くの友人たちの手助けと励ましもあって、見事てっぺんまで上り詰めた。
感激のひとときを岩の上で味わった。
そして、シャクシャインのレートは、今では《10、d》となっている。
ワンランク落ちたのである。
たぶん・・・わたし如きが登れたので、ワンランク下がったのかもしれない。