ドラマのロケで、ビルの一室をお借りすることがある。ビルも、銀座や日比谷といった、いわゆる一等地に建つ建物。
部屋は立派だし、窓は縦も幅もおおきい。
そこから眺める景色は、大都会そのもの。
日本の近代につながる文明の象徴とも思える眺めである。
その眺めを見せたいが為に、わざわざ都会のビルでロケをしている。
昔のドラマでは、撮影所に部屋のセットをつくり、窓からの眺めは、
窓の外に、撮ってきた写真をパネルに拡大して貼り付けていた。
業界用語でいう、《かきわり》である。
これが結構、リアルであった。
ほんとにどこかのビルからの眺めに見えた。
しかし・・・・
そのころの撮影では、フィックスと言って、カメラを固定して撮っていたが、
現代では、カメラの下にレールを敷いて、移動しながら撮るのが
当たり前である。
カメラが移動すると、窓枠の向こうの背景パネルとの距離感が,
ちぐはぐになる。
写真だとバレる。
ってなこって、いまでは写真パネルを使うのをやめたようだ。
最近は、どうしても背景を入れたい時は、
窓の外にグリーンの布を張って、あとでCG映像をはめこむ。
しかし、それにはお金がかかるので、なるべく既存のビルをお借りする。
やはり現実のモノには勝てない。
数十階建てのビルの窓から見下ろしながら、セリフを喋るのは、
それなりの気分が押しよせてくるものである。
「クビと言われるんですか?」
たったこれだけのセリフにも、シチュエーションが大切なのである。
それをどこで喋っているのか?
目に何が映って、喋っているのか?
ロケは、面白い。