軽薄短小と言われだして、長い年月が過ぎた。なんでも《軽く》なった時代である。
自転車も車も、カバンも服も、布団も軽くなった。
でも、重い方がいいものもあるはず。
いや言葉を間違えた。
重くなければ、役にたたないモノ。
たとえば・・・
・ヨットのキール
ヨットの底の水中に、トンという単位の重さの金属が付けられている。
帆に風を受けて走るヨットが、空中部分に横風を受けても、
水中では、転覆しないように、重りが支えている。
・映像カメラの三脚
ドラマや映画のカメラを支える三脚は、ズシリと重い。
カメラも重い。
持ち運びには、軽い方がいいに決まっているのだが、なぜか重い。
理由は、ブレない為。
フィックスと言って、ジッと動かさずに撮影している時ならまだしも、
パーン(横にまわ)したり、ズーム(近よったり)した場合、
映像がブレるのは、カメラがしっかり固定されていないからである。
土台が重くなければ、ブレる。
特に、寄り(超アップ)を撮る時には、
誰かが近くを歩いただけで振動が伝わり、ブレる。
望遠の映像もしかり。
その重いカメラ三脚を持ち運ぶ人が必要となる。
そこで、この人物が要る。
《カメラアシスタント》 通称カメアシ。
彼は、ロケ現場で、常に三脚を肩に担いで歩いている。
もちろん、仕事はほかにもたくさんある。
その中でも、重労働は、重い三脚の移動だ。
彼と言ったが、最近はついに女性のカメアシも現れた。
ちっちゃい女性が、自分の背丈ほどのカメラ三脚を担いでいる。
山の中でも、走り回っている。
表現としては申し訳ないが、アリが大きな葉っぱを、
運んでいるさまを連想させる。
女性のドラマスタッフ進出はめざましい。
音響さんは重いモノを持たないだろうと思うでしょうが、
実は、ブームというモノがある。
マイクを棒の先に付けて、長く伸ばし、音をとる。
棒は、最も伸ばすと5mほどになる。
役者が喋っている間、棒の端っこをずっと両手で支えて持っている。
ブルブル震えてはならない。
以前は、アルミの棒だったので重かった。
いまや、カーボン製が登場し、女性でも支えられるようになった。
当時、道具が重いので無理だと考えられていた、照明部門。
多少軽くなった頃から、どんどん女性が増えた。
美術部門。
女性がいない方が珍しくなった。
つまり、最後の砦的に思われていたのが、カメアシである。
あの重い三脚は無理だろうという予測がそろそろ壊れそうになっている。
なのになぜか、華奢に見える、か細いヒトが、
カメアシに立候補するんだなぁ~
カメラマンになりたいという切なる想いがそうさせている。
ドラマの未来は明るい!