「何もないところを走りますので」喋ってくれているのは、佐賀空港から乗ったタクシーの運転手さん。
「何もない」とは、いかにも佐賀風で面白い。
そういえば、佐賀空港に空から降りたことがなかった。
以外だった。
九州7県には、それぞれ空港があると思っていたのだが、
佐賀空港は、20年ほどまえに出来たと、その運転手さんに教わった。
この空港へのランディングは気持ちがいい。
有明海の上空から、北の端にある滑走路に降りるのだが、
直前の窓の外に目をみはる。
なんたって、ムツゴロウの棲む干潟が延々と拡がっている。
これまで陸地からしかその姿を見たことがなかったが、
空から眺めると、干潟の模様が様々な形にうごめいている様で、
窓ガラスから顔を離せない。
(窓はガラスな訳ない)
運転手さんの言葉どおり、平地の畑や田んぼの中を走るので、
いっけん何もないのだが、普段何かが在りすぎる景色ばかり眺めている、
都会人からすると、ホッとする風景である。
そんな道を30分も走っている時だった。
運転手さんが口をひらく。
「ここから先、何もないところを走りますので」
あんですと!
今以上、何もないところが、これから始まるとですか?
どげんとこですか?
もう充分、何もなかと思うとりましたですが・・・
しかして、その後30分、ほんとに何もないところを、
走り続けているのだった。
ただし、佐賀県民と親切な運転手さんの名誉のために言っておこう。
「コンビニも何もない」という意味だったのではないか・・・と。