「刃物を持った男が、銀行のカウンターで金を要求」テレビのニュースが知らせている。
「50代の男は、持ってきたカバンに金を入れろと・・・
持ってきたカッターナイフで――」
伝統的な銀行強盗の見本のようなやり方。
あまたの映画やドラマや、ニュースで、この手の映像は、
擦り切れるほど見てきた。
銀行をはじめ、郵便局、コンビニ・・・
現金が有りそうな店を襲う強盗の映像を繰り返し見てきた。
誰もが思いつき、
誰もがこのやり方では失敗すると知った。
私もドラマでやったし、捕まえもした。
監督に、「こんなの安易じゃないですか?」と助言すらした。
あまりの失敗映像を観させられると、
かんぐってしまう。
ひょっとすると、
「襲撃をやめさせる為の、国家的なプロバガンダなのか」と。
こんな襲撃は99%失敗するヨ・・との。
なのに・・・
ニュース男は、銀行を襲ってしまった。
最後の1%に賭けたのだろうか。
このニュースに触れるたびに、
ワザとやっているのではないか、
迫られた何かがそうさせているのではないか?
あまりもの行動のやりきれない哀しさに、真相を知りたくなる。
するとどうしても、彼の真意を想像してしまう。
実は50歳代の年齢の彼は、若かった頃観たあの映画を思い出し、
こう叫びたかったのではないだろうか――
《私を牢屋に連れてって》