これは、とあるビルにある喫煙室の換気扇を撮ったもの。吸い込み口が、煤のようなもので塞がりかけている。
タバコの煙りでこんなになるのだろうか?
手前に写っているのは、明かりの覆いの金属。
この表面も、おなじ煤のようなモノでおおわれている。
どれほどの時間が経つと、こうなるのだろうか?
こうなるまでほおって置かれた哀しい喫煙所。
喫煙者に厳しい時代だとはいえ、喫煙室の外の部屋にある、
同じ形状の換気扇はキレイに掃除されている。
ひょっとすると、喫煙者に、
「こんなモノが、肺に入っているんだヨ」という警告だろうか?
タバコを吸っている頃には、タバコが吸えなくなる環境が、
いまいち想像しがたかった。
ある程度、たかをくくっていた。
その昔、飛行機の中でも、タバコが吸われていた。
満員電車の中でもスパスパ吸われていた。
あの山手線ですら、禁煙でなかった。
映画館はモウモウとした煙の中で、映写機がまわり、
夜の飲み屋にいたっては、火事かと思わんばかりの煙で、
のれんをくぐると、入り口から奥が見えないことすらあった。
吸っている人はまだしも、吸わない人は、よく我慢してくれたものだと、
いまさらながらに感謝したい。
たかが25年前の舞台の稽古場、休憩時間に灰皿の前に集まった。
役者のうち、9割が喫煙者だった。
中には芝居の稽古をしながら、出番がない時、
プカプカやっていた者もいる。
さすがに舞台上演の客席は禁煙だった。
煙の問題より、火の後始末の方が気になったとみえる。
「タバコは文化だろう」
この言葉に寄りかかっていた自分が恥ずかしい。
「酒は百薬の長だろ」
この言葉に同じく寄りかかっている自分を恥ずかしがる時が、
いつかくるのだろうか?
入笠山 マナスル山荘 犬のアジ君の家