「謙蔵じいさん、無形文化功労者に選ばれたそうですヨ」「無形ってなんじゃ?」
「ワリバシを作っているじいさんの生き方が、褒められたんですヨ」
「ワリバシは有形じゃないんかい?」
「作ったワリバシは有形なんだけど、じいさんは無形なんだってサ」
「・・・わからん」
「おめでとう」
「あっそ」
「じいさんはワリバシの概念を変えたもんネ」
「なんが」
「割れないワリバシは画期的だったじゃない」
「割れんバシ・・じゃ、あれは、失敗じゃろ」
「ユニークでしたヨ」
「使えんかったからナ」
「3つに割れるワリバシも、喜ばれていたヨ」
「あれが?」
「もし食事中に一本折っても、予備がすでにできているという」
「あんまり売れんかったゾ」
「そういえば、アレは売れたねぇ~」
「食べるワリバシか」
「食事のあと、ワリバシも食べてしまうというアイデア」
「わしは、豚骨味が好きじゃったど、ホホ」
「ウナギ味が一番受けたネ、ヘヘ」
「バニラ味はなぜ受けなかったんじゃろ?」
「さあ、デザートは別にしたかったんじゃない」
「ワリバシの楽器も良かったネ」
「あんなもんが?」
「割る前の木の隙間に、爪楊枝をさしこみ、先っちょをはじく」
「100本使ったナ」
「ピアノの鍵盤のように並べて、上からはじくと言う楽器」
「うん」
「1オクターブの間に、100段階」
「わしゃ、音階がわからんけん」
「醤油をつけたモノとソースをつけたモノでは、音階が違うんだネ!」
「それは、孫が見つけたんじゃ」
「マヨネーズと、ジャムではまた違うしネ」
「高音に苦労したナ」
「いったん凍らしたモノにヘアスプレーをかけたネ」
「違う、接着剤を塗ってから凍らせるんじゃヨ」
「武道館で、ヘイジュードーを演奏した時は、満杯になったネ」
「あの楽器の名前、なんちゅうたっけ?」
「ワリンバシでしょ」
「当りくじは面白かったんじゃがな、アハハ」
「割れた部分に当りが書いてあれば、もう一本貰えるという」
「どうやって、木の中に書いてあるのか、誰も分からんかったナ」
「割って初めて見つかるという」
「なじぇ、アイスキャンデーの会社が訴えとるんじゃ?」
「似たのを昔から作ってたんだってサ」
「じゃから、ホームランが出たら貰えますに変えたろが」
「それも、違うところから告訴されてるヨ」
「ギネスブックはどうなったんじゃ?」
「ああ~使い古しのワリバシだけで出来た車ネ」
「走るんじゃゾ」
「え~とネ、道路交通法違反で、認められなかったんだよネ」
「なじぇ?」
「怖くって、乗るヒトいる?」
「ワリバシだけで建てた家は?」
「住みたいヒトいる?」
「ワリバシで造った船は?」
「だからさぁ~」
「飛行機だって作ったゾ」
「謙蔵じいさんの表彰式は、来週だってサ」
「おぅ、ワリバシで作ったタキシード着ていこうかのう」
「あれ、ちょっと臭いヨ」
「そりゃ、もつ鍋屋で集めたもんじゃからヨォ」
沖縄北端 辺戸(へど)岬