ご近所に、バラ園を趣味で育てているご夫婦がおられる。ボクらは、そこを《秘密のバラ園》と呼んでいる。
売るわけでもなく、育てる楽しみだけに特化したバラ園。
初夏の季節は、バラの盛夏である。
赤、黄、ピンク、白、まだら・・・
様々なバラが園内に咲き乱れている。
ご主人がハサミを手に、園内を一周して、いろんな種類のバラを、
摘み取ってくれる。
家に持って帰り、花瓶にいける。
バラの香りは、バラ園にいる時より、家の中の方が薫るような気がする。
密室のなかに広がる甘い香りは、酒酔いとはちがう酔いをする。
町の花屋さんには、バラの花束を数十本束ねて、売っている。
確かにキレイなのだが、消えゆく儚さを感じて、さびしくなる。
ところが、秘密のバラ園で摘み取った花束には、
蕾がいくつも付いている。
そこには、明日という未来がある。
次々につながる明日がある。
バラは最盛期をずらして摘み取るのがおすすめだ。
一瞬の春では、あまりに可哀そうである。
まだ蕾の弟、いもうと、親戚たちをならべて、共にめでたいものだ。
そういえば、バラの香水というものがある。
バラの花びらを絞ってオイルを抽出し、香水にしてしまう。
なんでも、1グラムのオイルを採るのに、
3000本のバラが必要らしい。
高価なのも、うなづける。
なぜそのことを思い出したのかと言えば、以前、世界の車窓からの、
たしか東欧の列車の旅の中で、
バラの香水の話が出てきたからだ。
バラ園を退出した私の腕には、バラだけでなく、
なぜか玉ねぎがぶら下がっている。
園内でついでに育てている玉ねぎをいただいたのだ。
採れたての玉ねぎは、甘くてみずみずしく、うまい!
嬉々としてステップしながら帰る私である。
「花より団子」とはよく言ったものだ。
昨夜は、玉ねぎの匂いの方が、勝ったナ・・・