先日、山カフェにおいでくださったフリーアナウンサーの、大橋未歩(おおはしみほ)さんが、こんな話をしていた。
「山に登るのは、苦労の自作自演ですネ」
ふむ、言われてみればその通りである。
誰かに頼まれる訳でもなく、無理やり登らされる訳でもないのに、
ヒィヒィ大汗をかいて急坂であえいでいる。
仕事でもないし、レジャーというには、あまりにも苦労が多い。
その苦労は、あえて苦労の中にとびこんでゆく、
自作自演なのだと言う。
この言葉を聞いた途端、頭の中では、
《山》から《役者》に置き換えていた。
役者の生活なんて、苦労の自作自演かもしれない。
誰に薦められた訳でもなく、してほしいとねだられた訳でもなく、
自分が自分で勝手に始めただけ。
となると、いろんな職業の方は、ドキッとするかもしれない。
自分が今やっている仕事は、ひょっとしたら、苦労の自作自演なのか?
違うとは言い切れない何かにドキリッとするかもしれない。
あえて、わざわざ、火の中にとびこんで行く行為。
仕事だけでなく、趣味の世界や長旅などでは、苦労が多い。
そこにわざわざとびこんで行くのは、
明らかに苦労を自作自演している。
なぜ、ヒトは、そんな行為を好むのだろうか?
本能だろうか?
それとも種の存続の為には、必要な性質なのだろうか。
いずれにしても、この行為には反省という言葉はない。
「好きで始めたことだから」という大義名分の看板が掲げられている。
看板をひっくり返したら、こう書いてあるかもしれない。
「文句あるか」

武将に扮する