相変わらず、旅から旅へと渡り歩き。三泊四日で、乗った交通機関は、17を数える。
列車にバスにトロリーバス、ロープウエイにケーブルカー。
今回は、飛行機に乗っていないのが不思議なくらいだ。
飛行機しかマイルが溜まらないのは、私的には不公平に感じる。
移動はすべて溜まってもらいたい。
ついでに高速道路も溜まってくれれば、なお嬉しい。
マイルで生きていけるのではないかとさえ思えてくる。
移動は疲れるというのが定説だが、もう慣れた。
だいぶ前から慣れてはいるのだが、慣れにも拍車がかかっている。
段取りや、カバンの詰め込み、送り作業が簡潔になっている。
世の中の流通も良くなったのが、私の動きに連動してきた。
私の場合、ビジネスマンではないのだが、
このまま背広を着ていたらと、思う時もある。
ビジネスクラスという席にの名前に納得できる。
今、これを書いているのは、とある駅の待合室、
《ビジネスコーナー》と書かれた席。
軽く板で囲われ、電源とWEB充電用端子も装備されている。
・長時間の利用は・・・
・飲食のみの利用は・・・
注意事項も専用に照らされる明りの中に浮かび上がる。
早朝の待合室は、けだるさが漂っている。
その中で、パソコンのキーがカタカタとウルサイのは、
いただけないので、そっと叩いている。
隣の席には、きちんと紺の背広を着たビジネスマンが、
本物らしいパソコンの打ち方をしている。
さきほどコンビニで買い求めたらしいドッグパンを頬張ったまま、
両手で打ち込んでいる。
《一日分の野菜》と書かれた紙パックのジュースと、
ビヒダス菌ヤクルトが、彼のすべてを物語っている。
身体には気を付けているようだ。
レジ袋も貰ってきていないようなので、エコにもきびしい。
早朝なのに、充電中のスマホのラインのピコ~ンが、
立て続けに鳴っている。
ひょっとすると、海外から届いているのかもしれない。
それに慌てて出ていないところを見ると、
送り主が分かっているという証だろう。
やがて、彼のスマホが違う音色を立てだした。
今度は、素早い反応をする。
二度ほどタッチしてそれでおしまい。
なるほど、タイマーをかけていたようだ。
列車に乗る時間を忘れないように、のタイマーだった。
その直後、私のスマホも鳴り出した。
こちらもタイマーである。
(本物の)ビジネスマンを真似た似非ビジネスマンであるが、
時間だけは、厳しい。
やがて、荷物をまとめて歩き出そうとした時、
私が手にもっているパックゴミを見て、彼の視線がこちらにあがった。
《一日分の野菜》
マスクごしに彼がニヤリとしたのが分かった。
「同志」と呼びたかったのかもしれない。
「いえいえ、アナタには負けますヨ」との目くばせをして、
ホームの階段をかけあがったのだった。
引退したロマンスカーVSE