大分県の県南には、リアス式海岸が続く。《リアス式》という言葉は、スイスのリアス地方から名付けられた。
入り江と半島が出たり入ったりを繰り返す地形の代名詞になった。
関サバで有名な佐賀関半島から、臼杵市、津久見市、佐伯市、
と続き、蒲江の漁村地帯の先で、県は宮崎県に移る。
海岸線は、やたら激しい出入りを繰り返す。
海の中は、複雑な地形になる。
海の上は、おだやかになる。
風や波が入ってこないので、常に平らな水面となっている。
最南端の蒲江(かまえ)、に定期船で渡れる島がいくつかある。
その中の、《屋形島》やかたじまの渡船に乗った。
船中10分という近距離にも拘らず、海をへだてた離島の趣。
近くて遠い島である。
島民の数は少ない。
この島に唯一、ゲストハウスがある。
いわゆる民宿。
ただし、食事は自分で作る。
船で運んだ食材で、古民家に泊まりながら、島暮らしを楽しむ。
なんといっても、海の美しさは、群を抜いている。
ある意味、何もせずに過ごす贅沢な時間を楽しむ。
古民家と言っても、ご主人は、インドやネパールなどを、
放浪した経歴を持ち、家屋の装飾に、
その影響を感じる。
「ちょいと離島に」
いまどこに居るのかと問われて軽い返事をしてみたくなる。
山の上は、すぐにエスケープできないが、
島なら、ひょいと渡船で買い物もできる。
浜辺にねそべり、潮のさざめきと、小鳥の歌だけを聞いている。
海岸には、緋扇貝(ひおうぎがい)の色とりどりの貝殻。
こんなところでは、文庫本の小説のめくりがすすまない。
明るくなれば目覚め、暗くなったら布団におちる。
夕焼けの余韻を楽しもうと、ビールがすすめば、
外には、怖いほどのミルキーウエイ。
ネットもスマホも通じるのに、ひらきやしない。
こんな島・・・いいな。