「昨日まで雨だったんですよ」旅ロケのスタッフに言われる。
究極の晴れ男がいつも言われる台詞が又吐かれる。
「イシマルさんが来た途端、梅雨明け宣言されましたヨ」
気象庁が、「九州南部に梅雨明け」と宣言したその日、
宮崎県に立っていた。
あっぱれに晴れ渡っている。
晴れるのはいい。
いいのだが、温度計の赤いメモリがグングンあがり、
スタッフ全員の顔が紅潮している。
「イシマルさん、気温もなんとかなりませんかネ」
晴れ男に、難題無理を要求してくる。
言われた晴れ男とて暑さに弱い。
日焼け止めを塗りたくっているものの、暑さでクラクラしている。
朝から、ペットボトルの水を傾けっぱなし。
幸いドラマではないので、汗をかくことに、
さほど神経質にならなくてすむ。
シャツが汗で濡れていても、まあ、許してもらえるかもしれない。
その甘えで、10時過ぎには、ペットボトル2本目が、
プファ~とあいた。
ふと気づくと、セミが鳴かなくなった。
セミも暑すぎると鳴かなくなる。
午後が怖い。
真夏の炎天下の中、九州の山野を歩き回るのは怖い。
熱中症、で倒れるのではないか・・・
「カヌーしませんか?」
ディレクターが汗びしょの額を突き出して言いよる。
川遊びをしようと提案してくれている。
しないでか!
川という場所は、その地域で最も標高が低いところ。
空気とは、温度の低い気体として、下に下にと落ちてくる。
つまり水面に落ちてきて、行き場を失い、風力を増して、
動き出す。
風である。
我らは、川の上でカヌーを漕いでいた。
カヌーによる川下り。
水が下る方向と逆の風が吹いている。
したがって、進行方向正面から涼しい風が吹いてくる。
川の両岸は緑ばかりの森林。
ウグイスがケキョと鳴き、透明度抜群の水の中には、
小魚が銀輪を光らせて泳いでいる。
《おいかわ》という名の魚だと教えて貰う。
やがて目的地の川岸にたどり着いた。
その途端、我慢できなくなった私は、水の中にとびこんだ。
水はひんやりと冷たい。
泳いだ――
潜った――
吠えた――
真夏は川遊びが一番。
いったん冷えた体は、やすやすと熱くならない。
その後、一時間以上、サラサラの肌のまま、
次のロケを楽しんだのでありました。