空港というモノは、新らしい建物になるたびに、大きく広くなる。ほとんどの建造物がそのテツを踏んでいる。
そして、空港の場合、上に伸びられないので、
横へ横へと伸びてゆく。
日本には、100に近い空港がある。
一日に数便しか飛ばない空港だらけでもある。
羽田空港では当然、そんな空港行への搭乗口は、
「はるか」かなたに歩いて行かねばならない。
登場受付を終わり、荷物検査をすました所から、遠足が始まる。
搭乗口の数字が搭乗券に書いてある。
数字がものすごく小さいか、ものすごく大きいのを見た時は、
覚悟したほうがいい。
導いてくれる通路に歩く歩道があれば、乗った方がいい。
それに乗って乗って乗り継いだ先のまだ先にやっと、
覚えた数字が見えてくる。
途中に遠足の休憩所のように喫茶があったりする。
片方のウイングだけで、廊下が遠近法の、
四角いトンネルのようになっている。
いつだったか、北ウイングの端っこまで遠出をして、
ベンチに腰かけて読書していたら、アテンドの女性がやってきた。
「イシマル様でしょうか?駐機場の位置が変更になりましたので、
こちらへお越しください」とお願いしてきた。
なにやら、登場口が変更されたらしい。
小説本に没頭していたので、変更アナウンスを聞き逃したのだ。
言われた数字は、大きな数字。
ふたりで必死で歩いた。
空港の端から端まで駆けるように歩いた。
腕時計を見ると、出発時間ギリギリである。
そのころ、機内でシートベルトに縛られているお客たちは、
なぜこの機が出発しないのか、やきもきしているに違いない。
こんな時の為に構内に自転車かタクシーが欲しいとさえ思った。
セグウェイならもっと良かった。
その昔の俳優の大御所は、カメラマンに、
「少しだけ、前に出てください」と言われて、
「そっちが来い」と返事したという逸話があるが、
この場合、「飛行機がこっちへ来い」となるのだろうか?
それはさておき、端っこから端っこへの変更とは!
私も災難だが、一緒に走っている彼女も災難である。
アナウンスを聞いていないおバカな乗客一人の為に、
ランニングをさせられている。
途中から、このままでは間に合わないと思ったのか、
「お荷物お持ちいたします」
言うなり、私のカバンを袈裟懸けにして、走り出した。
速足だった歩きが、小走りにかわり、最後は、徒競走さながら・・
しかして、汗びしょになった私が機内に現れ、
乗客のきつい目が注がれる。
「あいつだ、あいつが遅刻したから飛行機が遅れたんだ」
声にない声が刺さる目線で送られてくる。
おまけに、棚に荷物を入れようとしたら満杯で、
アッチを開けたり、ソッチを開けたり、
埒があかないので、アテンド預かりとなり、
やっとシートベルトを締めらされ、
ガタンと動きだした時に、トイレに行っておくのを忘れたことを、
思い出したのだった。
「あの~すみません」
「おすわりください」
「はい」

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