「雷鳥寒かろラリルレロ」役者が発声練習に使っているア行から始まる例文のラ行だ。
羽が夏と冬で生え変わる雷鳥(らいちょう)。
やまに登らなければ、見ることができない鳥。
標高の低い動物園にもいない。
日本の雷鳥は、世界の中でも特殊な存在。
例えば、カナダやシベリアなどでは、低地で暮らしている。
気温の低いところが好きなのだが、なにも高山に棲む必要がない。
まるで日本の鳩のように、その辺にいる。
ところが、日本では氷河期から今に至る間に、
徐々に寒い所が平地になくなり、高山へと移り住まざるをえなかった。
3000m近い場所に安住の地を見つけたのである。
今のところは――
かれらに遭おうと思えば、山に登る。
とはいえ、バスで行ける場所に、雷鳥が生息している所もある。
《室堂》むろどう
立山連峰の中にある美しい別天地。
スニーカーレベルの靴で歩き回れる。
遊歩道もあり、小一時間グルリと回れば、運が良ければ、
雷鳥に出会える。
親子でヨチヨチ歩く姿を見ることもできる。
人間がルールを守って、雷鳥に悪さをしないので、
懐いている。
人の近くにいると、猛禽類から身を守れるというメリットもあるらしい。
ときには、間近でオスが胸をはっている姿がお目にかかれる。
「はい、どうぞ」
シャッターチャンスを与えてくれる。
調子にのって近寄らなければ、いつまでもポーズをとってくれる。
山の中にいる鹿と雷鳥は、優れたモデルである。
・そこに立ってほしい
・アッチ向いてほしい
カメラマンが要求する前に、自らやってくれる。
・背景に立山連峰をいれて、霧もほしい
美術さんの代わりもしてくれる。
ただし、どこの山でもやってくれる訳ではない。
ほとんどの山では、次第に生息数が減少している。
守れるのは、人間のやさしさかもしれない。
ちなみに、雷鳥の鳴き声は、まるでカエルの鳴き声です。
ゴェ ゴェ ゴェ