《斜里岳》 しゃりだけ 1547m
山登りというのは、登山靴を濡らさないように登る。
靴底が濡れれば、滑る。
滑ればコケる。
事故となり、ヘリの出番。
だから、滑ったり、転んだりの山道は、エキスパートだけの山となる。
ところが――
日本百名山の中で、斜里岳だけは、沢を登らせる。
水がザーザーと流れる急斜面の激流を、登らせる。
「登らせる」とい言葉が変ならば、
「登ってもいい」と薦めている。
川の岩を伝って川を横断する。
これを《渡渉(としょう)》と言う。
たったの数メートルなのだが、落ちたらズブ濡れ。
ケガをするやもしれぬ。
何回、川の反対側に渡たるかと言えば、数えきれない。
縫物教室で言うところの、ジグザグ縫いの連続である。
この行為が好きか嫌いかは人による。
私は大好きの人である。
《渡渉(としょう)》とは、
必要だから、川の反対側に渡る事を言う。
基本は、飛び石渡りなのだが、石と石が極端に離れている場合、
流木をかけて、その上を歩いて渡る。
《冒険》の文字が浮かんでくる。
冒険であるからには、落ちたら只では済まさない。
普段の山登りでは味わえない興奮がココにある。
石から石に飛び移っている最中だった。
(ボクはこれに向いている)
ハタと気づいた。
小学生の頃、学校に行くには、川の橋を渡らなければならない。
真面目に橋を使うと、かなりの大回り。
最短距離は川を渡ればいい。
そこで、ランドセルを背負ったけんじろう君は、
幅30メートルの川を、石から石へ走って渡ろうとした。
とはいえ、落ちればランドセルはドボン。
教科書が濡れる。
ではどうやって落ちずに向こう岸まで走り通せるか?
石をよむ。
乾いた石、濡れた石、動かない石、
なによりも石と石の距離。
すべてを瞬時によみとり、スタートする。
最も流れの速い場所の石と石が、一か所かなり離れている。
距離が長い。
もしその手間で立ち止まれば、《立ち幅跳び》では届かない。
つまり、スピードに乗ったまま走り続けなければクリアできない。
用意、スタート!
けんじろう君はリズムに乗って走り出す。
ピョンピョン、ぴょぴょんピョン。
結果、一度も落ちることなく、その小学校を終えたのである。
(校則には、「川を渡ってはいけない」と書いてあった)
書いた先生も昔、落ちながら渡っていたらしい。
と、いうことで、この斜里岳の石渡り登り。
素晴らしい!
傾斜はキツイ
左端を登る
倒木を渡る
右端を登ってきた