北海道の帯広に泊まりたいと、ふと思った。ネットで夕方にホテルを取った。
さて、なにを食べようか?
やはり、帯広に来たからには、羊肉だろう。
40年前に食べた羊肉が忘れられなかった。
まだ世の中に、ラムという言葉が浸透していなかった頃である。
ホテルを出て、30秒ほど歩いた時、その店が現れた。
ノボリに、ジンギスカンの文字が――
すぐにドアをあける。
ヒツジ肉の良い匂いがただよう。
注文があってから、肉をさばいて、さらに味付けをするという、
コダワリのある店らしい。
生ビールをゴクゴクやりながら、注文したヒツジ肉に喰らいつく。
この夜の食事に満足し、その後、旅を続けている内に、
その店と同じ名前の店舗がアチコチに現れたのである。
どうやら、有名店らしい。
そして、面白いことに、私がぶらりと入った店は、
《本店》だった事が判明。
実は、一週間後、ふたたび帯広を訪れ、その本店を訪ねた。
ヒツジだけでなく、牛も豚もなんでも焼ける、
いわゆる焼き肉屋さんだった。
9時間、山の中を歩き続けたあとの、肉を焼く匂いは、
格別であり、身体が入れ替わる瞬間であった。
店の名前は、
《平和園》