《鷹の渡り》 たかのわたり
タカも渡り鳥なのである。
――と知ったのは、最近。
ガンが、への字編隊となって、南へ飛んでいくのはよく見る。
あんな風景が見られるのだろうか?
神奈川県の三浦半島、《武山》たけやま、に登った。
秋になると、頂上付近に、双眼鏡を持った方がおられる。
晴れた午前中には、人が大勢いたりする。
みな、タカの渡りを観察に来た方たちだ。
遠くの南の島を目指すタカは、どうやって高度をかせぐのか?
羽を羽ばたいて飛ぶのでは、大量のエネルギーが要る。
それは無駄だというので、
上昇気流を利用して、まず高度をかせぐ。
それには、山が必要。
三浦半島は、海に突き出た陸地で、房総半島とならんで、
最後の高い場所。
午前中に海風(海から陸地に向かって吹く風)が、山にぶつかり、
上昇気流を生み出す。
そこが、武山。
タカは北の方から飛んできて、いったんこの辺りで英気を養い、
海風が吹き出すと、その風に乗って、
クルクルと回りながら、高く高く登ってゆく。
トンビが上昇するのと同じ原理であがってゆく。
1羽の時もあるが、複数のタカで登ってゆく。
やがて、かなりの高度を稼いだタカは、滑空するかのように、
南を目指して飛んで行くのである。
どこまで行くのだろうか?
例えば、次に大島へ行き、そこで再びクルクルをするらしい。
その行為を何度も繰り返し、遠くへ遠くへ飛んでいく。
この渡りは、タカに限らない。
その中に、ツバメや蝶も交じっている。
みんな体力温存の為に、クルクル上昇をする。
中には、ハヤブサ(タカの仲間)のように、羽ばたくのが得意で、
ただただ羽ばたくだけで、南を目指すアスリートもいる。
そして、タカとひとくくりにしたが、種類はいろいろ。
ノスリ、サシバ、ハチクマ、ツミ、チゴハヤブサなど、
私には区別がつかないタカの仲間が飛んでゆく。
・・・ってな情報を、集まっている双眼鏡仲間にお聞きした。
タカの渡りのピークは、10月前半とのこと。
タカの渡りは、日本のアチコチで観られる。
北アルプスでも観られると、山小屋のご主人に教えて貰った。
トンビがクルクル舞っていると思ったら、ひょっとするとソレは、
タカの渡りかもしれない。

タカ・・ かもしれない