黒百合ヒュッテの窓から
「ひと冬に一度くらいの晴天ですネ」
語っているのは、北八ヶ岳の標高2400mに建つ山小屋、
《黒百合ヒュッテ》の小屋番さん。
風もなく、雲ひとつない快晴は、そうそうあるものではない。
特に、山の上で「あっ晴れ!」と声を出したくなるのは、
そうそうない。
日本列島に日本海から、ザカザカザンと雪がもたらされ、
毎年イヤになるほどの積雪がある。
山深い新潟や長野では、喜ぶのはスキー場ばかりで、
悩みは大きい。
喜んでいるのは、冬山登山者も、すこし喜ぶ。
アイゼンやカンジキを履いて雪山を闊歩したい人たち。
新雪を踏んで、山の上に立ちたい人たち。
マイナス10℃を下回る寒気に晒されながら、
やっとたどり着いた山小屋で、ビールを呑みたい人たち。
湯気のたつゴハンにかぶりつきたい人たち。
2年ぶりの黒百合ヒュッテ。
今、改装中である。
小屋を営業しながら、すこしづつ内装を変えている。
床も壁も天井も新品に変わっている。
そうなると、隙間風もなくなり、暖かくなっている。
勿論、灯油ストーブは赤々と燃えているが、
外気温との差が、30度ほどもあるので、快適だ。
山小屋の暖房装置は、以前は、マキストーブが常だった。
小屋の近くの雑木を切って、乾燥させて燃やしていた。
それが近年、木の伐採を禁止する条例ができ、
切れなくなった。
すると、マキストーブの燃料のマキはどうする?
麓で買って、持ち上げなくてはならない。
それには労力も値段も張る。
となると石油ストーブの方が、はるかに安いし労力もいらない。
とはいえ、ドラム缶などをあげるヘリコプター代は高い。
我らが、ぬくぬくとストーブの周りに座り、ビールを呑んでいるのは、
コロナの中で、自ら収容客数を減らしてでも、
小屋を営業してくれている小屋の方たちのおかげである。
では、山小屋の泊まり代は高いのか?
コロナ前は、7000~9000円ほどだったが、
さすがに、人数制限をしているので、少しだけ上がった。
それでも、
9000~11000円ほど。
これを高いと言えるだろうか?
なんせ、物資や水のない山の上に、人力、またはヘリで、
燃料も食料もあげている。
全部ヘリであげていたら、とんでもなく高くつくので、
人力がほとんど!
人力とは、《ボッカ》と呼ばれる。
明日、その話をしよう。
黒百合ヒュッテの玄関前からの黎明