《ボッカ》という言葉は、あそこで有名になった。尾瀬――
尾瀬のボッカさんは、度々テレビでも紹介され、
ボッカという呼び方が、広まった。
歩荷という職業(プロ)を世間が認めたのである。
特に、尾瀬を訪ねたことがある人ならば、
その姿を見たこともあるかもしれない。
自分の背丈を大きく上回る荷物を背中にせおい、
尾瀬の木道を、黙々と歩いている。
ほぼ80キロの荷を、背負子に乗せて運ぶ。
彼らの背負子の担ぎ方は、一般の登山者のそれとは違う。
ボクらは、腰の所にある横向きバンドで締め、担いでいる。
その方が、重い荷物が軽く感じるからだ。
ところが、尾瀬のボッカの場合、腰ベルトはない。
両肩のベルトのみで担ぐ。
なぜか?
荷物の高さが、人の身長すら超えるので、腰のあたりで、
重さの中点を作ってしまうと、全体のバランスが壊れ、
倒れてしまう。
肩のあたりが、重さの真ん中、つまり重心となるので、
そこで担ぐことになる。
当然、これは重い!
脚力だけでなく、背中の背筋、あるいは腹筋にも、
しびれるような負担がかかる。
職業(プロ)とはいえ、いかほどのご苦労か・・・
マネをする人がそうそう現れないのも頷ける。
いま、尾瀬のボッカさんが、自ら映像を撮って、ネットにあげている。
お互い同士を撮りあい、お喋りしている様子が、
いかにも自然体で、面白いし、頼もしい。
ドラマや映画では、見栄えを大切にするため、ボッカと言えば、
ラグビーのフォワードの様な人をキャスティングしてしまうが、
現実には、ナンバー9(スクラムハーフ)のように、小柄である。
痩せている(ように見える)。
必要な筋肉は、インナーマッスルなので、太い筋肉ではない。
ヒマラヤなどの山岳エリートのほとんどが、
そんな体格をしているのと、同様だ。
その尾瀬の木道が、最近痛んできた。
登山者は、なんとか歩けるが、ボッカが歩きにくい場所が、
増えている。
どうやら、修理の資金がないんだと、映像の中でも語っている。
富士山に入山料を寄付的に集めているように、
日本の宝、尾瀬にも入山料はアリなのではないかと、
歩荷の姿を見るごとに、思っている。
試しにどれくらいの荷物を担いで歩けるのか?
歩荷さんに訊いたことがある。
「長距離でなければ、100キロですかネ」
ひ・ひ・ひゃっきろッ・・・!
驚いていたら、
「もちろん登りの話しですけど」
ひぇ~~~~