「ああ~3人分だな」
行きつけの魚屋さんの前にいた。
《太刀魚》が売られていた。
タチウオの大きさは、釣り人の間では、《指》で表される。
長さではなく、幅が大切とされている。
「指、4本だね」
「いや5本あるよ」
などと言う。
どういう測り方か?
マナイタに太刀魚を横に置いた場合、
自分のすべての指を揃えて、魚体に平行に重ねる。
すると、小指から親指までの幅が重なれば、
「5本だネ」となる。
仮に、5本と呼ばれた太刀魚の長さを、
頭から尻尾の先まで測ってみると、
90センチを超える。
時には、1m越えも!
6本ともなると、《ドラゴン》とまで騒がれる。
その5本クラスが、行きつけの魚屋に並んでいた。
目が釘付けになり、ハッと気づくと買い物カゴに入っていた。
かなりの長さがあるので、帰るなり半分にカットした。
「3人分あるな」
冒頭の正直な気持ちが浮かぶ。
町の食堂の、太刀魚の塩焼き定食がベースである。
半分にカットしても、3人前。
しかし、そこで、さらに切断するという気持ちは湧かなかった。
それどころか、
「このまま焼いたらどうだろう?」
積極的な動きに出た。
確かに、腹は減っていた。
山の中から帰ってきたばかりだった。
ポンドステーキ的な考えすら浮かんでいた。
焼いた。
塩だけでコンガリ焼いた。
魚焼き器の中に、端から端まで突き当たっている。
太刀魚は白身なので淡泊だと思われるフシもあるが、
いやいや、ジュージューとやかましい。
焼けた姿をそのまま皿に置いたら、冒頭の写真になった。
はみ出している。
寿司でも、丼でも、《はみ出し系》は喜ばれる。
値段以上の幸せ感に満ちている。
写真の左端に腹身の部分が写っている。
いわゆるトロの部分だ。
さきほどジュージューと、うなっていたのは、
この部分から垂れた脂が、原因であろう。
イザッ!
この食事風景は、ライオンとかハイエナとか、
サバンナの肉食獣のそれに似ていた。
余裕というものが感じられない、骨以外しゃぶり尽くすという儀式。
実際、途中で無意識に、「ガオ~」と口に出した気がする。
さほど旨かった。
旨かったのだが、3人前は誤りで、定食屋的な計算方法だと、
4人前と定めたい。
なにごとも「過ぎたるは・・・」である。
脂による太刀魚の逆襲は、食後、私に襲い掛かってきたのであった。
残りの半分は、さらに半分にカットしましょう。
ゲップ――
仮電柱って、なに?