昨日、ボッカさんがどのくらいの荷物を担つげるのか? 歩荷さんに訊いた話しをした。
すると、100キロを担いで登ることができるとの返事が返ってくる。
ただし、登りでネ。
すると、聞いた人たちは驚く。
《平地》ならまだしも、《登り》でか・・・
ところが、ボッカさんの発言の真意は違う。
彼は、《くだり》では、無理かもと匂わせている。
登山をあまりしない方は、あまりにも登りがツライので、
下りは楽勝だと考えている。
頂上に到着すると、
「さあ、あとは下りだから楽ですよぉ~」
リーダーも皆を鼓舞している。
これは、正しいだろうか?
答えは――
心理的には、正しい。
下りが楽なのは普段から、駅の階段や、神社の階段で実証済みだ。
しかし、それらは、短時間しか下らない場合にすぎない。
山では、数時間下る。
最低でも1時間、時には、5時間も下る場合すらある。
駅の階段を20秒下るのと大違い!
たとえば、首都圏の西に広がる山並み、丹沢山系の、
登山道の標高差は、1000m~1500mほどある。
この高さから下る感覚やいかに!
長い階段で有名な、金毘羅さんの階段は1368段。
仮に、1段25センチの高さだとすると、標高差は340m。
20センチだと、270m。
つまり、あの長いと言われている階段の、3回分下らねばならない。
人間の足の筋肉は、下りにむいていない。
進化の過程で、下る想定をしてこなかったとみえる。
「下りさえなければねぇ~」
山登りを長年やってきた登山者たちは、声を揃えてそう言う。
登りだけなら、疲れが残らない。
下りは辛いと、皆が感じている。
実際、私の感覚でも、1500mほどの標高差を登り、
下りをロープウエイで下った時、翌日筋肉痛など全くなかった。
ピンピンしていたと断言する。
そしてその逆は、ボロボロになっていた。
BS《にっぽん縦断・こころ旅》という自転車旅のテレビ番組で、
俳優、日野正平さんが、名言を発している。
「人生くだり坂が、楽です」
自転車の下りに例え、人生あくせくしている登りは辛いが、
下りになると、心が平和になって楽になると、人生訓を語っている。
けだし名言である。
50才、60才を過ぎるにしたがって、
くよくよすることも少なくなり、
やがて、何かを悟るようになり、楽になるという言葉。
「自転車だって、下りは楽でしょ」と述べている。
はい、それはですねぇ~
人間という動物が、下るのが不得意だから、
《車輪》という発明をして、
下りは、「何もしなくても良い」ようにしたのです。
車輪の発明は、「下りが不得意」の発見とも言えるのです。
そこで、私は、こう思ったのでした。
「はるか昔の、猿から進化中の先祖の方たちヨ、
下りをもっと頑張ってて頂戴ヨォ~!」 大分県国東半島 旧尖塔寺