《フォイル》を始めた。フォイルとは、ウインドサーフィンから進化したもので、
水中に羽があり、その揚力で、浮き上がって空中を進むモノ。
《水中翼船》の原理に近い。
羽というより、飛行機の翼そのもの。
飛行機の翼は、空気の揚力を利用しているが、
フォイルは、水の揚力に頼っている。
水は、空気より、とてつもなく密度が高い。
ゆえに、揚力がその分、高い。
飛行機が速く飛べば飛ぶほど揚力が高くなにのと同じで、
フォイルも速く走れば走るほど、空中にすべてが浮いてゆく。
《すべて》とは、飛行機型の翼以外、すべてである。
つまり、何も知らずにその姿を見ると、
水の上1mの空中に、ウインドサーフィンが、
人を乗せて空を飛んでいるのである。
操る人間は、ボードの上に立っている。
セールという風を受ける帆を両手で持っている。
風のチカラを下に位置する翼に伝える。
では、人はどのくらいの高さに居るのか?
1mほどの高さで、足の裏がボードを踏んでいる。
すると目の高さは、プラス身長分となる。
トラックの運転手の目線で、時速40キロ以上で走っている。
私は、その初心者。
初めてフォイルに乗ろうとする人に襲いかかるモノは何?
フォイルの上下動。
あがったり、下がったり。
あがれば空に向かってボードがロケットのように発射し、
とんでもない事態となる。
下がれば、ノーズ(ボードの先)が水面にささり、
激突ブレーキがかかる。
上に乗ってスピードを出している人は、前に吹っ飛ぶ。
「一本背負いやられたぁ~」
前にぶっとぶ行為を、《一本背負い》と呼んでいる。
水中に落ちればいいのだが、道具に身体をぶつける事もある。
うちみ、打撲、突き指、
温泉の効能の張り紙をそのまま、自分のからだに張りたくなる。
あばら骨をぶつけると、しばし息ができなくなる。
ヒビの問題も生じる。
だから、上半身に巻きつけたライフジャケットの弾力にたよる。
とはいえ、息が止まるのはいたしかたない。
「一本背負いをくらうのは、やめましょう」
教えてくれている師匠のツッシーに諭されるのだが、
好きで喰らっている訳ではない。
私の性格の《無謀さ》が悪い方に傾くと、
あばら骨が犠牲になる。
ただし今のところヒビも折れもない。
生まれてこの方、骨折をしたことがない。
骨が折れない分、ヒザがアッチに曲がったりして、
じん帯だのに迷惑かけている。
「ケガしません」宣言をして、新たな遊びにのぞんでいる。
師匠ツッシーの浮上ジャイブ