~~~昨日のつづき~~~
人類は、空を飛びたかった。
鳥を見てあこがれた。
「鳥のように空を飛べたら~」
詩人は、いつの時代もつぶやいていた。
私人も、生まれてまもなくつぶやいていた。
そして、詩人はそこに、この言葉も付け加えた。
「自由に」
そう、自由に空を飛びたかったのである、鳥のように――
鳥に近づこうと、人類は、飛行機を作ったが、
エンジンというマシンのお世話になっている。
やや自由度に欠ける。
パラセールという、風にのって平地からでも飛び上がり、
大空に舞い上がるアイテムも手に入れた。
パラセールの空を舞う完成度は高い。
時には、カラスにも脅されるというのだから、
鳥たちにも、いちもく置かれる位置を確保したのだろう。
そこで、トビウオにいちもく置かれようと、開発された
《フォイル》
これは、風が一定であれば、何時間でも浮いていられる。
したがって、100キロでも200キロでも、走っていられる。
(疲れなければ)
実際、上達したひとたちは、いったん海に出ると、
2時間以上たっても岸に帰ってこない。
ずっと走り続けている。
途中で、水分補給さえすれば、いつまでも遊覧飛行している。
時速50キロになんなんとする速さで――
さて、これは、上手になった人たちの話だ。
私の場合は、初心者なので、爆沈(バクチン)を繰り返している。
バクチンとは、水上クラッシュの表現で、
恐ろしいこと極まりない。
これまでのウインドサーフィンの場合は、
水面がすぐ近くにだったので、バクチンしても、衝撃は少なかった。
相手はしょせん、水。
ところが、フォイルでは、高さ1mの板の上に立って走行している。
自転車を立ち乗りしていると思っていただければよい。
(そんなことしたことない)
という方には、自転車の二人乗りをして、
アナタは荷台に立っていると思えばよい。
その自転車は時速30キロ以上、40キロも当たり前。
たとえ周りが水だらけだとしても、転倒すれば、
自転車本体という硬い物質にぶつかるかもしれない。
ジャッキーチェンならいざ知らず、
わざわざスタントもどきのバクチンは味わいたくない。
しかし、その怖さを克服しなければ、先に進めない。
みんなすでに先に進んでいる。
追いつけ追い越せの精神が、いま発動されている。
頭にはヘルメット、ドライスーツの中にも、自作のプロテクター。
あばら骨を守る為の具材を身体に巻き付けている。
その姿は、ぶくぶく膨れたミシュラン人形に見えるだろう。
「イシマルさん、太ったんじゃないの」
逢うヒトごとに言われる。
たしかに、胴回りはタルのよう。
とてもスポーツ選手には見えない。
だからついでにと、準備運動の時、シコを踏んでいる。
どうだ!ドスン!