《メーデー航空機事故の真実と真相》 CS放送で、日々流されている番組である。
世界中で数十年前から起きた飛行機事故のひとつひとつを、
映像で再現したもの。
事実の検証を、事故当時のパイロットや乗客などが証言し、
俳優たちがリアルに再現している。
この番組は、事故の検証の過程を見せてくれている。
番組を見ていると、
「こんなにたくさんの飛行機事故があるんだ・・・」
一年に何度も飛行機に乗っている身としては、
怖気づいてしまう。
羽田空港に行くと、入り口近くに本屋がある。
平積みにたくさん並んでいるのは、航空機関連の本。
その中には、《墜落》に関するものもある。
ということは、コレを買い求め、そのまま飛行機に乗る方がおられる。
座席のシートベルトをカチャリとやったら、
墜落の本を読むのである。
この方の克己心やいかに!
これは、新幹線のキオスクで、列車モノである小説、
《十津川警部シリーズ》西村京太郎著を買い求めるのと、
似ているようで、かなり違う。
飛行機はドキュメントであり、列車では小説だ。
それに、戸津川警部シリーズでは、脱線や転覆はない。
殺人があるではないか――と怒られそうだが、
あくまでフィクションに過ぎない。
特急列車のリクライニング座席に座りながら、
十津川警部の推理に身をよせていると、
まさか、後ろの席から刃物で襲いかかれるとは思わない。
ところが、飛行機の座席にうずくまっている最中に、
本の中では、翼に付いた雪の結晶の問題を学んでいる。
となると、つい窓の外の揺れ動く翼が気になり、見てしまう。
あるいは、エンジンの異音に敏感になる。
ヘッドホンで音楽など聴いている場合じゃない。
離陸前に、いつもよりかなり待たされた時間は、
何だったのか?
雲につっこみドスンと揺れるや、「ついにきたか!」
不安が本の解説で倍加してゆく。
墜落には、必ず理由があるという摂理を、長いフライトの間、
コンコンと読まされる。
「読まされる」と、文法上の使役方をつかった。
最初は、おのれにうち克つ為に読み進めていたものの、
いつのまにか、誰かに読まされている感覚におちいる。
仮に、この飛行機が落ちたとした場合、
この本を読んでいたからといって、何か墜落を回避できるとか、
気を失ったパイロットに代わって操縦するとか、
んなこと、出来る訳もなく、ただ自らを不安に落とし込めようと、
内部爆弾をふくらませているにすぎない。
おそらくこれらの本を空港で買い求めるヒトは、
たとえそういう場合でも、「知る」という知識欲に飢えているのだ、
と思いたい。 ~~~~~~~~~
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