ヒトの、事件とも思える危ない瞬間を見て、危険回避を学ばなくてはならない。
たとえば――
・エレベーターに乗る前に、トイレはすませておく。
・歯ブラシを咥えながら歩かない。
・ウインカーを出さずに曲がらない。
・靴をつっかけて履かない。
・熱い器を片手で運ばない。
・見ることなく、後ろを指ささない。
当たり前だろと、指摘される事柄ばかりである。
この最後の一行を説明させてもらいたい。
駅のコンコースで、前から歩いて来た方が、
後方を振り向いて、仲間に呼びかけている。
「コッチ、コッチ!」
その時、自分の後方、つまり歩いてゆく前方に向かって、
人差し指を突き出す。
コッチだと、指さすのは構わないのだが、
まったくコッチを見ていない。
もし見たならば、そこに人間が居て、
目の高さに突き出された指が、いましも、
目ん玉を繰りぬかんばかりになっている事実を、
知るだろう。
慌てて、目の前の指を、手ではたく。
はたかなければ、指で目ん玉が繰りぬかれていたかもしれない。
ギリギリの選択であった。
すると―ー
「なにすんだ!」
人差し指の持ち主が、怒り出した。
自分の手をはたいたと、湯気を出している。
コンコースの通路で、もめごとは困る。
ここは謝るしかないと、今起こった事を静かに諭すのだが、
はたかれた方は怒りが収まらない。
そのあげく、指先を顔面に向かって突き出してくる。
どうやら、指が強いのかもしれない。
危険回避とは、想像力がいる。
常に、先をヨムちからが必要だ。
自分に起きる事件もさることながら、
ヒトが起こすであろう先読みも想像力に含まれる。
エレベーターに乗る前に必ずトイレに行くと仰るアナタは、
エライと思います。
思いますが、あまりにも神経質になると、
生きるのが難しくもなります。
《必ず》という部分を外してもよいかも。