真夏のゴルフやったことがある人ならば、この言葉の意味が分かるだろう。
《草いきれ》という言葉と同義語であると言っていいだろう。
コンクリーの上は真夏は暑いとは知っている。
しかし、それ以上に暑いのは、草いきれかもしれない。
まとわりつくような暑さ。
風のない日にゴルフ場の芝草の上にいると、
前方の景色が、かげろうで歪んで見える。
距離感がおかしくなる。
朝いちばんのティーに立った時にすでに、
温度計を見たくない状態になっている。
最初の一打をぶっぱなしす作業で、ドバッと汗が噴き出す。
「ざまーみろ」
ゴルフをしない方に、嘲笑われるのも当然だ。
ゴルフが上手な人は、あまり距離を歩かない。
ティーで打ったら、最短距離をホールまで歩き、
その間、いち二回クラブを振るだけだ。
ところが、私の場合は、とにかく走る。
アッチにソッチにボールが飛ぶので、
アッチに走り、バチン!
ソッチの丘の上に登り、ガチンッ!
再び、谷底におりてゆき、ガツンッ!
うまい人の3倍も叩いて走って、やっとグリーンで合流する。
パターを握ると、グリップが汗でベトベトだ。
ピンに向かって、静かに狙いを定めていると、
アゴの下から汗が、水道の蛇口を完全に閉めなかった時のような、
ツ~~と水がしたたる。
それが、グリップにボトボト落ちてハネる。
まわりの同行者が驚いて、見ないふりをする。
途中自販機で水を買うのだが、500mlが、
漏斗のように消えてゆく。
なぜ、真夏にこんなことをしているのだろう?
と疑問が湧くべきなのだが、
実際は、一打でも少なくゴルフをしたい気持ちが高く、
とにかく走る。
肩には、4本のアイアンを担いでいる。
なんどもバッグを置いてあるカート(移動車)まで取りに行くのは、
時間がかかるので、使いそうなクラブを持ち走る。
「走らなくていいよ、ゆっくり」
同行者はやさしく言ってくれる。
しかし、歩いていたら、我がグループだけ時間がかかってしまう。
その責任は、私にある。
だから走る。
昼休憩の時に、気温を調べたら、気象庁的には、
35度だと言っている。
という事は、実際の草の上では、40度を超えているだろう。
サッカー選手だって、真夏に走っているではないか!
意味のない言い訳をしながら、走って皆と合流すると、
「あれっ?意外と汗かかないんだね」
言われた私の衣服は、まだらを通り越し全身がズブ濡れで、
いっけん汗をかいているように見えない。
汗かきには利点もある。
いまだ、《熱中症》になったことがない。
常に「自ら汗という水をかぶっているから」と、
自分に言い聞かせている。
バシュッ1