いざ、ジャンダルムの岩峰へ~~~つづき~~~
ん・・・あの形は、ジャンダルムではないか!
小屋を出発して8時間がたった頃、見覚えのある姿が、
霧の中に浮かんできた。
見覚えと言っても、はるか遠くから見てきた岩塊である。
もっこりした形の割には、飛騨側は断崖絶壁で、
落ちれば、はるか下に自由落下となる。
ジャンに登るには、南側からとりつく。
いまジャンと、まるで横浜の住人のような呼び方をしたが、
昨夜泊まった山小屋で、登山客から、
「ジャンに行くんですか?」
という質問を受けた。
最近、どこかでも「ジャンに登る」という話し方を聞いた。
「ダルム」をカットするのが、はやりらしい。
文章を短くする為に、ダルムをカットするやり方を習おう。
ジャンにとりつくと、徐々に岩を斜めに登るようにあがってゆく。
ここでは、手は積極的に使わない。
意外に、ここまで登ってきたルート内の岩峰の中で、
もっともおとなしい崖かもしれない。
ところが、ジャンに命がけで登る猛者の為には、
北側におそろしいルートがあり、白い〇がペンキで書いてある。
時には、猛者でもない人が、その白〇を見て、
勘違いして登り、落下するという悲劇もある。
バリエーションルートの哀しさである。
自分で判断しなければならない。
「間違って」だの、「迷って」だのは、ここでは許されない。
ジャン登頂!
そこには、石積みの上に、金属で造られた
《天使の水やりジョウゴ》のモニュメントがあった。
皆がそれと共に写真を撮るらしい。
この天使は2代目である。
初代は、2004年に作られ、コレは2014年の作。
どなたが作ってここに置いたか、知ってはいるが、
まあ、良いものはそっとしておこう。
写真を撮っているときに、不思議なことが起きた。
10mほど離れた所に、鳥たちがいる。
5羽ほどの中から、1羽がコッチに向かって、
ピョンピョンと跳ねてきた。
5m・・2m・・1m・・・・20センチ!
声を出さずにジッとしていたら、我らふたりの周りを、
まるで歓迎するかのようにグルリと回り、首を上下させて、
ヒョイと飛び立った。
山の上にいる鳥は警戒心が強く、人に寄って来ない。
なんだったのだろう?
写真を撮って後で調べたら、
《イワヒバリ》だと分かった。
どんな世界でも、物おじしない果敢な子がいるものだ。
~~~つづく~~~