馬の背 奥にうっすらと奥穂高岳
《
ウマノセ》
~~~つづき~~~
ジャンを降りたら、次なる難所に向かう。
そこはこう呼ばれている。
《馬の背》うまのせ
日本の山のアチコチに、馬の背と名付けられた場所がある。
10や20では数えきれないだろう。
その中でも、ここは、危険度NO,1。
馬の背とは、両側が切り立った尾根のことを指す。
ところが、ここは、尾根自体が急傾斜している。
それも、岩が斜めにむき出しで、突き出している。
たとえを、してみよう。
アナタの両手を、胸の前で組んで祈るような形にしてみて下さい。
そこから左手と右手の指をピンと伸ばして下さい。
古代の家の屋根の上みたいになりましたネ。
それを手前に傾けましょう。
脇をしめると、両側が絶壁になります。
それが、ジャンの馬の背です。
こんな岩場がずっと続きます。
時には、指を祈る状態に戻します。
さて、どうやって乗り越えていきますか?
自然の岩場とは面白いことに、脅かした割りには、
《弱点》という場所があって、なんとかなるように出来てます。
実際、なんとかなるから、人が通る。
たしかに危ない。
特に逆行で降りるとすれば、かなり危ない。
良きことに、登りだったから、どうにかなる。
ふと・・・この場所を馬の背と呼ぶのはいかがなものか。
生きている馬の背中はもっとユルやかではないか・・・
人が座れるほどなのだから。
私的には、ココはこう呼びたい。
《キリンの首》
サーカスでは、馬の背中に立ったりするが、
キリンの首はさすがに、立ったり登ったりはできないだろう。
キリンの首を無事通過し、やがて奥穂高岳の頂上に着いた。
ホッ
あとは穂高岳山荘まで下ればいいだけ。
やっとノーマルルートにたどり着いた。
最終的に、登攀タイムは、10時間かかった。
1時間オーバーである。
「いっぷんください」
が30回あれば、30分オーバーとなる。
ある意味ギリギリの体力勝負となった。
このあと、山小屋で、ビールが飲めなかった。
食事もほんの少し食べて、すぐに休んだ。
どうやら、ハァハァのし過ぎで、軽い高山病の症状が出たようだ。
頭痛こそなかったものの、ふたたび深呼吸の人となる。
とはいえ、翌朝はゴハンをしっかり頂けた。
そして、上高地まで涸沢経由でガンガン歩いて降りたのである。
上高地でソフトクリームを舐めながら、前日歩いた
ギザギザの鋭鋒を見上げ、数をかぞえてみたのだが、
重なりが激しく、数えきれなかった。
ソフトクリームを自由の女神のように、
連峰に向かってささげてみた。
ジャンダルムルートを残してくれて、ありがとう――
~~~おしまい~~~ キリンの首は長く細い 3点確保