《
編笠山》
「腹をかかえる」この言葉は、人間の心と身体の一体性をうまく表現している。
あまりにも可笑しくて笑い転げそうになっていると、
人は、手を腹に当てる。
これはなぜだろうか?
私のこれまでの観察では、
腹筋の弱い方に多く見られる現象とみた。
人は弱い部分をかばおうとする。
笑うという行いは、腹筋をふんだんに使う。
試しに、いま笑うマネをしてみてほしい。
腹筋が、前後に動くのが分かる。
激しく笑うには、相当の腹筋の前後運動が要る。
「あははははははははは」
大きな声で笑うにも、腹筋力は欠かせない。
では、
「腹筋を鍛えれば、大きな声で笑えるのか?」
はい、大きい声が出ます。
大きな声で笑う人たちは、その行為自体で、
腹筋が鍛わっている。
(その割には、太鼓腹ではないか?)
その意見もあるが、それと腹筋は別の話し。
お相撲さんの太鼓腹の奥には、強い腹筋があるのです。
ということは、常日頃、あまり腹筋を鍛えることのない人は、
大笑いをしようとすると、弱い部分をかばう為に、
腹を押さえることになる。
これを昔から、
《腹をかかえる》と表現してきた。
体勢=形は、実態を表わしている。
腹をかかえれば、かかえるだけの理由がある。
形を思いうかべてみよう。
大笑いの時に、頭の後ろで手を組む人はいない。
手をオジイチャンの散歩のように、後ろで組む人もいない。
布団にうつぶせになる人もいない。
(この体勢が最も腹筋が使いにくいから)
ましてや、
人間失格の太宰治のように、手をアゴに当てる人もいない。