「乗降者は中二階あけましょう」 とある会社の従業員エレベーターに貼ってあったモノ。
なにげなく読んだ。
「中二階」を「ちゅうにかい」と読んだ。
「ちゅうにかい」とは、たとえば、3階と4階の間にある、
中途の階のことだと、考えた。
それを「あけましょう」と勧告している。
一瞬のことだが、中二階にある隠し扉を思いうかべ、
ソレをそぉ~と開けようとしている自分の姿が、そこにあった。
中に何があるのだろうか?
その昔の城の天守閣には、
《中二階》だの《中三階》だのがあって、
弓や刀を持った武士が隠れていた部屋があった。
押し入って来る敵を、息をひそめて迎え撃つ役割だ。
まさか、現代の会社のビルにそんなモノはないだろうが、
いや、ひょっとしたら、あるのかもしれない?
社長を逃がす為の、秘密の通路があるのかもしれない。
あるいは、脱税の資料がたんまり積んであるのかもしれない。
ブルース・ウィリスの通勤路かもしれない。
トム・クルーズも好みだと聞いた。
そんな不埒が考えが、一瞬浮かんだ。
つまり、エレベーターの中で、文字を見た瞬間、
降りるまでの時間、そんなややこしい事を考える。
もっと高尚なことを考えるべきなのだが、
性格がいいかげんなので、妄想の世界に入り込む。
ジャッキーチェンは、さして必要ないだろうし、
スティーブン・セガールは身体が大きすぎて、抜けられないナ。
そして降りるだんになって、《中二階》の本来の意味を悟る。
今いる場所が5階だとしたら、「中、二階をあける」のだから、
(6,7階をあけて)
8階より上なら、エレベーターに乗ってよい。
下方には、2階以下なら乗って良い、となる。
《乗降者は中二階あけましょう》
この言葉だけで、すべてを理解しなければならない仕組み。
初めて見た張り紙なのだが、コレは常識の張り紙なのだろうか?
ビルに努める会社員は、良く知っている張り紙なのだろうか?
車内則とかで、定められているのか?
ひょっとすると、たくましいアスリート会社によっては、
《中三階》、《中五階》とかあるのだろうか?
そもそも、一階の乗り場に、
「3階までは階段を使いましょう」
と書いてあったモノを、途中階用に、
誰かがひねり出した文章と思える。
谷川岳に登る為に、上越線の土合(どあい)駅に降りると、
地上に出る為に、462段の階段を登らなければならない。
すると、おおきなザックを背負った登山者が、ぶぅぶぅ文句を言う。
「ぁんだよぅ~こんな長い階段つくりおってぇ~」
彼らはこれから、谷川岳の岸壁を標高差1500m以上、
階段よりきつい傾斜を登る人達である。
なのに、なぜか文句をたれる。
人工の階段は別問題だと感じているらしい。
その気持ちが理解できるので、とても面白い。
たぶん彼ら登山者が、先ほどのビルのエレベーターにある、
件の表示を見たら、言うだろう。
「エレベーターなんか使わないヨ、たかが10階分だろ」 谷川岳のお隣の八海山