
《
八ヶ岳三つ頭》
昨日の話の続きになる。
私は、誰かに出会った時に、良く知っている方でも、
「いしまるけんじろうです」
とフルネームで挨拶するクセがある。
100人に一人くらい、名前を忘れている人がいるかもしれない。
ド忘れってこともある。
だから、名前を名乗る。
「あ~イシマルさん、私ですヨ」
何かの会場などで、手を振る方がおられる。
はて、誰だろう?
え~とお会いしたような気がするのだが、名前は何だったかな?
名前ってやつは、一年に一回声に出さなかったら、忘れる。
少なくとも、文字で見なかったら、忘れる。
手塚治虫氏は、漫画《火の鳥》の中で、不死身となって、
「一億年たったら、自分の名前を忘れる」
と記してある。
読んだ時、そんな馬鹿なと思ったが、さもありなん、
1000年も持たないかもしれない。
40年ほど前、テレビドラマにやっと出番が訪れた頃、
現場に行くと、フルネームで自己紹介していた。
どちらかと言うと短くはない名前なので、口に出すのは、
まどろっこしい。
聞くがわも、各駅停車されているようで、相打ちがつきにくい。
それが、印象には残ったらしい。
もちろんそれを意図して、フルネームで喋っていた訳ではない。
役者はフルネームで名前を言わねばならないと、
なぜか思ってしまったフシがある。
その以前に、こんなことがあった。
「たなかです」
北の国からで有名な今は亡き俳優さんに挨拶された。
一般的には、フルネームで語られる人物だ。
「たなか?」
たしかに《田中》には間違いないだろうが、
《邦衛》が常にくっついているので、なにかしっくりこない。
この印象がつきまとっていたので、
自分の名前を言う際、フルネームにしていたようである。
すると・・・
30年ほど経った頃、ある宣伝カメラマンの方に言われたのである。
「その昔、イシマルさんが、ご自分の名前をフルネームで、
自己紹介していたのが、ユニークでしてネ」
「えっ、そうだったんですか?」
「そんな役者さん、誰もいなかったから」
だそうである。