昨日話したアサギマダラ色の波打ち際には、 いろんなモノが打ち上げられる。
今から30年ほど前の話だ。
ウインドサーフィンを終えて、浜でウエットスーツのまま、
休んでいたら、あるモノが見えた。
その日は、ダンパーと言って、波が大きくカールして、
波打ち際に打ち付けるような砕け方をしていた。
危なくて、一般の人が近づける波ではなかった。
っと・・・波の中に大きな魚が見えた。
その波が、ドダ~~~ンと崩れた。
すると、あろうことか大きな魚が波と一緒に砂浜に、
打ちつけられたのである。
ピチピチピチ
跳ねているのは、90cmはあろうかというスズキ。
次の波がくれば、引き波で、スズキは元の海に戻るだろう。
そこで、ダッシュしたのが、イシマルだった。
ウエットスーツを着ていたのが功をそうした。
15mほどを突っ走り、そのままスズキに向かって、
両手でダイブした。
ラグビーのトライの時に似ている。
尻尾を両手で掴む。
その途端、次の波に襲われ、平たい砂浜の上を、
ゴロンゴロンと濁流で転がされる。
万歳した格好でスズキの尻尾を掴み、
横向けに3~4回転ゴロゴロ回されたかと思ったら、
引き波で、同じく3~4回転ゴロゴロ海に引き込まれる。
そこで、立ち上がろうとしたら、次の波でふたたびゴロゴロゴロ、
引き波でゴロゴロゴロ。
行ったり来たり何度も――その間、塩水をしこたま飲んだ。
それでも尻尾を離さなかった。
スズキの場合、尻尾以外を掴んだら、
アチコチ尖った突起があり、ひどい怪我をする。
そのうち、スズキもあきらめたのか暴れなくなり、
波もあきらめたのか、私の身体を岸にほおり上げた。
素手で大きな魚を海から掴みあげたのである。
この話をこれまで、アチコチで何度もしてきた。
ところが、誰も信じてくれない。
ウソを言っていると、私は嘘つき呼ばわりをされる。
ほら吹きだと指を指される。
そんな先週、その話を海の上で、共に釣りをしている仲間に、
話してみた。
すると・・・・
彼の息子が、まだ小学低学年の頃、
「イシマルさんが海に飛び込んで素手でスズキを捕ってきた。
それをボクが貰ったんだヨ」
と90cmのスズキを必死で抱えて帰り、
その夜、一家で食べたのだそうな。
話が、ウソいつわりでなかったという証人が、
タイムマシンに乗って現れたのである。
そういえば、そのスズキを食べた記憶がなかったので、
その後のスズキの行方を覚えていなかった。
貴重な証人が、いまや立派な成人となり、
ご家庭を持っている。
私の無実を証明してくれるには、うってつけである。
いつか、証言台に立ってもらいたいと、願わずにいられない。 サップで釣りをする