
《
鹿児島空港ピアノ》
「ではここで、野菜高騰について、発言をいただきます」
司会者が、パネリストに振ると、手を挙げる方が――
「え~先ほども申し上げましたが、わたくしが常々口にし、
公にも発表している文言でもありまして、
ここで繰り返しになるかもしれませんが、
あらためて皆様にお聞きいただく為に、
もう一度、お耳を拝借することに、断腸の思いで・・・」
なかなか内容が始まらない発言である。
彼が以前喋ったかどうか、みんな知らない。
知っていても、忘れている。
覚えているのは彼だけなのだから、前置きをとばして、
語ってくれれば、耳に入りやすい。
《先ほども申し上げましたように》口癖オジサンである。
オジサンは、
「アンタ、それさっき言ったやろ」
と指摘されるのが、ツラいらしい。
私は、一度喋ったことは覚えているヨ、と主張したい。
「二度目かもしれないが、大事な話なので聴いてね」
控えめに、枕ことばとして、使っている。
このオジサンの特徴は、
「先ほども申し上げた~」
と喋ったものの、それが、この会議だったのか?
昨日の会合だったのか?
定かでない時がある。
実際、思い返してみても、語っていない内容を喋ったりする。
それどころか、会議が始まって間もなく、
この口癖言葉が出てきたりする。
さすがにそれに気づき、
「あ~以前申し上げたのですが」
と言い換えたりする。
さすが、訂正も慣れたものなのだ。
そして時々変化球もほおる。
「先ほども申し上げ・・ようとしたのですが・・・」
先ほど、実は言わなかったらしい。
言ってないのだから、わざわざ言い訳してくれなくても、
構わないのだが、口癖なのだから、
つい、「先ほど~」の一言が口から出てくる。
出てきてしまったので、
「申し上げようとした」
と、ごまかしている。
うまい!
座布団を差し上げたくなる。
テレビとは、生放送でない時には、《編集》がある。
時間調整の意味で、チョキンと言葉を切ってしまう。
1時間の会話が、半分に編集されることもある。
10分に縮まることすらある。
そうなると、
「先ほど申し上げましたように」
と言われても、先ほどの発言がカットされていれば、
いったいオジサンが何を言ったのか意味が分からなくなる。
そうすると、編集する人は、
オジサンの今の発言すらカットしてしまう。
オジサンは、後日テレビを観て、
ガックリ肩を落とす。
(わたしの発言は、殆ど取り上げられていないじゃないか)
となると、オジサンは口癖を変更するようになる。
「あらためて申し上げますが・・・」