秋の朝焼け、夕焼けは格別である。 それは、雲がおおきな役目を果たしていると思われる。
真夏のような、モクモクとした大量の水蒸気ではなく、
薄く刷毛で刷いたような、光を透かす働きをする雲。
光が透けて通ると、雲全体が輝く。
朝焼けが、どこまでも赤くなるのはその為ではないだろうか。
もうひとつ――
緯度の高いところの夕焼けは美しいと言われる。
それは、太陽が地平線の低い位置を通過するから。
低いと、長い時間、低い位置をキープする。
当然、長い時間、濃い空気の中を光が通過する。
赤が濃くなる。
沖縄で夕焼けを撮影していると、あっという間に終わってしまう。
ところが、北海道では、シャッターチャンスが長い。
「ああ~終わっちゃった」南国
「まぁだまだ大丈夫」 北国
この差は大きい。
大きいのだが、いつまでもカメラを構えていられるという事は、
いつまでもかまっていられないという反面もある。
《夕焼けにかまっていられない》
新作映画の題名のような標語がかかげられる。
この言葉があるならば、
《夕焼けにかまっていたい》
こっちも、捨てがたい。
最初から最後までかまっていたい。
時間に余裕があり、寒さに負けない気持ちがあれば、
そっくりかまっていたい。
しかし、このかまい方は、日本の北海道くらいで勘弁してもらいたい。
以前、北極圏近くで、夕焼けを観ていた。
「おっ、夕焼けが始まるのか!」
カメラを取り出して、シャッターを押す。
「おお~もっと夕焼けが進んだゾ!」
再び、シャッターを押す。
「なんだなんだもっと激しくなってきたぞ!」
シャッターを押しまくる。
「おいおい、どんどん赤くなって、もう空全体真っ赤じゃないか!」
パシャパシャパシャパシャ
「え~~いつまで続くんだこの夕焼けぇ~」
なんやかや、30分以上シャッターを押し続け、
ブルブル震えながら、呆れているのでした。
その後、パソコン画面は真っ赤っか!