この魚、名前は、 《イトヒキアジ》 糸引き鯵
魚の中で、背びれと腹びれから、ビヨ~ンと、
長く伸ばしたがる奴がいる。
代表的な魚は、《リュウグウノツカイ》と言われ、
タテガミが、全身の長さに沿う程、伸びている。
彼らは、伸ばせば伸ばすほどカッコイイと考えている。
とはいえ、泳ぐには邪魔に決まっている。
なのに、どこまでも伸ばしたがる。
アレはどういう進化の欲求なのだろうか?
ヒトも、髪の毛を伸ばしたがる。
髪ならまだよいのだが、ヒゲも伸ばしたがる。
ヒゲに収まらず、モミアゲだの、あごヒゲだの、
毛をいう毛を伸ばしたい欲求がある。
そのくせ、刈るのも好きだ。
散髪屋で、刈りに刈る。
ヒゲも剃る。
剃りに剃る。
バリバリ刈って、ジョリジョリ剃る。
その理由は、「邪魔」だと理解しているかららしい。
長いヒゲも長い頭髪も、ジャングルで虫除けに役立つ以外は、
殆ど、役に立たない。
短い方が、すべからく便利である。
なのに、伸ばそうとする。
若い時は積極的に伸ばそうとし、
年齢がいくと、消極的に伸ばそうとする。
《消極的》とは、積極的にしようと思っても、できないから、
消極的にならざるを得ないからだ。
残念だ。
魚の背びれのビヨ~ンと伸びたモノを見ると、
「ズルいんでないかい」
睨みつけたりする。
「そういう風に、ビヨ~ンと伸ばしていると、
未練がましいと言われるヨ」
言わずもがなの発言をする。
「ビヨ~ンが無い方が泳ぎやすいし、逃げやすいヨ」
見た目の美しさに嫉妬している発言をする。
実は、このイトヒキアジは、行きつけの魚屋で間違って買った。
本来買いたかった魚は、
《カイワリ》
非常に旨い魚で、高級魚である。
見た目は、イトヒキアジのビヨ~ンを全部取った姿と思えばよい。
つまり、間違って買ってしまった。
それでも、味わいは、豊かであった。
年老いてから、ビヨ~ンのマネをしようとすると、
おおむね失敗する。
途中まで試してみたが、やっぱりやめた。 三枚におろしている最中