プールで泳いでいる。 市営の25mプール。
最近のプールは、水温が高い。
最低でも、30℃。
もし、風呂桶がプールサイドに置いてあれば、
ザブンと浸かると、ぬるいお風呂かと勘違いする。
大分県の竹田市にあり、いつか行きたい温泉のナンバーワンが、
《ラムネ温泉》
ラムネのようにブクブクと泡がたつ炭酸泉である。
炭酸は、温度をあげるとブクブクがなくなるので、
熱くできない。
その温度は、32℃。
ゆっくり温まってネと、言われている。
つまりプールの温度は、このラムネ温泉に近づいている。
それもその筈、プールの利用者は、泳ぐというより、
ダンスをしたり、歩いたり、水中で体を動かしている。
ケガをしない為に、無重力状態で体の可動域を広げようとしている。
特にお年を召した方やリハビリには、おすすめの運動である。
同じくお年を召しても、目いっぱい身体を動かさないと、
我慢できない人たちもいる。
その人たちは、《上級者》と書かれたコーナーで泳がされる。
2レーンをひとつにして、右側通行で往復するように設定されている。
ある程度のスピードがないと、進入させてもらえない。
プカプカと背泳ぎなんてしていようものなら、
後ろからバタフライをしてきた野獣に足を触られてしまう。
お互いビックリして、ペコペコ謝っている。
時間帯を選べば、すいている。
小一時間、たったひとりで、上級者コースを独占できる。
そんな時は、ボォ~と泳いでいられる。
他のことを考えて、クロールをし続ける。
自分が泳いでいることを忘れる。
時間が経つのがはやい。
はやいと言いながらも、やはりプールで泳ぐのは、
つまらない。
ただただ水底の薄い水色を見ているだけ。
ジョギングのように、世の中が見える訳ではない。
様々な運動の中で、最も単純でつまらないかもしれない。
「つまらない」という言葉を使うと、
プール好きに叱られるかもしれない。
でも、水泳選手になるのならいざ知らず、健康の為だけでは、
誰かに、「プールで泳がない?」と誘う魅力に欠ける。
仮に――
「ねぇ、海で泳がない?」
と誘われたらどうだろう。
・どこの海?
・水温は?
・足はたつのか?深いのか?
・魚は見えるのか?サメはいないのか?
・海から上がったら着替えはどこでするのか?
様々な疑問と誘惑に満ちている。
まず、誘われた途端、空を見上げ気象を知ろうとするだろう。
それらの疑問をいっさい配して、すぐにでも行けるのが、
プールである。
手ぶらで行ったとしても、パンツもゴーグルも帽子も売っている。
こんなにプールにあふれている国は日本くらいだろうと思う。
日本で最初に作られた温泉プールは、
長野県の中房(なかぶさ)温泉にあります。
大正9年に作られ、有形文化財です。
誰でも泳げます。
「お風呂で泳ぐんじゃない」と叱られません。