東京の
新橋のガード下に映画館がある。
随分古くからあり、安い料金で、しかも、名作を
3本立てでやってくれる。
ある時、
007の3本立てをやっていたので、
ひょいと入った。
1本目が始まるところだった。
立ち見が出るほどの
満席だ。
007のオープニングといえば、
奇想天外な、アクションの連続と決まっている。
そう、まさに
ロジャームーアが、飛んだり、
跳ねたりしている。
5分くらいたった頃だろうか、館内が
ざわつき始めた。
(そういえば、さっきから、
効果音が聞こえないな。)
聞こえているのは、
<
さだまさしの精籠流しの曲>
ジェームスボンドがピストルを撃っている画面に
『きょ~ねんの、あ~なたの~、お~もいでがあ~』
とやっているのだ。
映写係が、休憩時間のミュージックを
切り替え忘れしたらしい。
ものすごい、シュールな空間である。
ジェームスボンドとさだまさし。
どんな、アバンギャルド前衛映画でも、思いつくまい。
それより凄いのは、
5分間も
観客が誰も、気づかなかった点だ。
(私も、違和感はあったものの、気づいてはいなかった)
こう云う事って、以外と、そんなもんなのだろうか?
それとも、
驚くべきアホどもが、
新橋のガード下に集結していたのだろうか?