~~~昨日からのつづき~~~
ズボッ
北八ヶ岳、双子山(ふたごやま)へ、
真冬の雪の中を登ってきた。
頂上はだだっぴろいなだらかな平原となっており、
ならば当然、風のとおりがよい。
よい・・・どころではなかった。
風速が23mまで達した。
なぜそんな、1の位まで風速が分かるのかと問われれば、
ウインドサーフィンで長年(34年)風にあたっていると、
体感で分かるようになる。
台湾のポンフー島でスピードチャレンジをしたが、
最大25mの風の中、歩き、ウインドをやり、
撮影し、かたづけもする。
一日中、風を受け、四六時中風速計で、
風の強さを目で見ている。
ウインドのレースに出ると、これが当たり前になり、
身体に受ける風の強さ速さが分かるようになる。
山でも実際測ったこともあるが、1mの狂いがなかった。
これは、ウインドサーファーなら当たり前なので、
自慢する話しではない。
「毛糸の帽子が飛んだ!」
頂上の暴風23mの風が私のからだを横にドンッと、
1mも移動させた。
登山靴にアイゼンを履いていなかったら、
もっと飛ばされたかもしれない。
風下の30mほどの所に、茶色の毛糸帽子が落ちている。
雪壁にひっかかり止まっている。
あの帽子が無くなったら、この先、頭が冷える。
冷えれば、思考能力が落ちる。
あぶない
そう判断して、取りに行くことにする。
風下に歩くのだから簡単だ。
しかしながら、登山道を外れる。
登山道とは、過去に人が歩いた跡であり、多少固くなっている。
そこを外れると、はたして――
ズッポリ!
一歩一歩がモモまで沈む。
抜け出すというより、そのまま深い溝を掘るかのように、
前進してゆく。
やがて、帽子を回収できた。
さて、ここからが、風上に向けて動かなくてはならない。
風は相変わらず、20m前後を強弱している。
帽子の上から手ぬぐいを縛り、その上に、
レインウエアの風防をかぶり、ヒモをしばる。
出ているのは眼球だけ。
良いことに、先ほど自分が作った溝の中を進めばよい。
こりゃ思ったより楽。
ラッセルとは、先頭の人が最もキツイ役目をする。
2番目、つまり帰りの30mは、過去の自分のおかげで楽ちん。
さ、問題はここからだ。
下りが始まるのだが、この先は、
あまり人が通っていない。
ということは、ズボッだのガボッだの、
ドスンッだのの連続となる。
おととい、モグラのお手伝いの話をしたが、
まさに、竪穴あけ大会となったのである。
一緒に歩いているのは、U君。
彼も、突然身長が縮まるかのような、ズッポリ落ちをする。
しかし、私より頻度が少ない。
歩き方の問題なのかと、そぉ~と足を置いてみるが、
体重をかけると、ズッポリとなる。
ん、いま、体重と言ったな?
「ねぇUくん、体重いくつ?」
こたえによると、私より、12キロ少ない。
なるほど、ズボッだのズッポリは、体重問題がすべてであった。
いまさら減らす訳にもいかず、方策はなし。
U君に前を歩いて貰い、ひたすら足跡を追いかける。
それでも、3歩に1歩はドスンと落ちる。
賢明にはいあがる。
この繰り返し。
10mに5回のズボッで計算すると、3キロの行進に、
1500個の深い穴をこしらえた事になる。
U君の場合、その半分としてもかなりの数の穴つくり。
しかし、いずれ、風が雪を運び、もしくは、
ヒト雪降れば、すぐに何事もなかったかのような平原になる。
また誰かが、穴開けをするのだろう。
この困難をしたくなかったら、
カンジキかスノーシューを忘れずに。 吹きさらしは、雪がとばされ深くない