昨日、大きな忘れ物、「車を忘れた話」をした。 ではもっと大きな忘れ物はないのか?
30年以上前のことである。
仕事を終え、疲れた足取りで、家に帰ってきた。
玄関の鍵を開けようとして、持参のキーの束の中に、
カギがないことに気づいた。
ん???
ガ~~~~~ン
頭の上に、漫画のような字幕が浮かぶ。
「こ、こ、ここは!」
私は子供の頃から引っ越しばかりしていた。
大学で東京に出てくるまで、
大分県内で23の家に住んでいた。
東京に来てからも、9か所のアパートや家に住んでいる。
そんな私が――
「前の家じゃないか!」
引っ越しをした次の日だったのだ。
移った新しいウチから出かけ、仕事を終え、
いつもの習慣で、電車に乗った。
駅を降り、いつもの道を歩いた。
んで、昨日まで我が家だった玄関の鍵を開けようとした。
間違いのくくりで整理すると、これは、
《勘違い》の項目にいれるべきかもしれない。
しかし、私の場合、《忘れ物》に分類した方が正しい。
なにかに集中していると、「何かを忘れる」のである。
その時の引っ越し先は、県をふたつ跨いでいたので、
帰りは、かなり時間がかかった。
「なかなかのいい旅をしてきたゼ」
意味不明の言い訳をしながら、
玄関の鍵を開けたのを覚えている。