動いている、自由に動き回ってる。そこは観光地のホテルの広い広い庭の芝生だった。
アメリカ映画では、しばしば芝刈りアルバイトが登場する。
裕福な家の庭の芝を刈るアルバイトだ。
もしくは、青年が母親に、
「芝刈りすんだの!」
叱られるシーンもよく観た。
猫の額のような庭ならともかく、広大な芝生の庭を、
芝刈り機で刈るのは難儀である。
時間もかかるし、刈った芝を集めてまとめて捨てなくてはならない。
ゴルフ場ならともかく、芝の庭はキレイなのだが、
管理が大変だ。
芝刈り要員を雇わねばならない。
早朝、ホテルの窓から、遠くの雪をかぶった山を眺めていた。
残雪が今年は少ないではないか・・・
顔をあげ続けていると、なんだか、
下方に黒っぽい物体が動いているのを見つけた。
庭が広いので、ちっちゃなゴキブリのように見えなくもない。
えっ、これって?
《自動芝刈り機》
周りに誰もいない。
マシンが勝手に動いている。
真っすぐ進んだかと思えば、適当な場所でクルリと回転し、
反対方向に向かってゆく、
音は随分小さい。
電動かな・・・
人間が、刈っているガソリン芝刈り機だと、
バリバリと大きな音で、刈っている感むき出しだが、
このマシンは、密かに動き回る小動物のようだ。
ゴキブリと言ってしまったが、撤回する。
《機敏なカメ》と言い直そう。
色も、ガンメタだ。
明らかに、車好きユーザーを意識している。
どうやら、《ロボット芝刈り機》おいう名だと思われる。
充電式で、値段は6万円ほどだろうか?
思ったより安い。
なるほど、広い芝生があるホテルだからこそ必要なアイテムなのだ。
ん・・・待てよ、ひょっとすると・・・
このマシンは、
メーカーからホテルにプレゼントされたのかもしれない。
私のような感想を持つ人たちに、宣伝する為である。
「アレ・・・ほしい」
つい呟いてしまう人に向けて、見える場所でアピールしている。
無言のプレゼンテーションそのものだ。
つまり、
温泉場の旅館だのにある、マッサージ機と同じ役目である。
「これ、ほしい」
つぶやきは同じ。
いまアナタがすぐさま、ネットで《芝刈り・・》と打ち始めたら、
メーカーのプレゼンは、
まんまと成功していると言わざるを得ない。