長野県白馬の山中に、自然園がある。《栂池自然園》 つがいけ 標高1900m
広大な湿地帯が、山の中にひろがっている。
偶然できたにしては、あまりにも広々とした平野だ。
この地は冬に、6mもの雪が積もる。
ダケカンバの樹々が、ほとんど埋まってしまい、
その上を雪原スノーシューハイクができるほど。
《自然園》と聞くと、
花々を植えて育てているのかと勘違いしてしまう。
違う。
そこに生えている花たちを、触らず摘み取らず、
あるがままに咲かせている。
早い話しが、野生なのである。
それを人間に観てもらうために、木道を造り、
グルリと歩けるようにしてある。
そのあげく、一か所あるピークまで、
標高差200mの登山に近い行為もできる。
6月は、水芭蕉の博覧会の様相である。
何千、いや万の単位の水芭蕉の群落を見ることができる。
こんなに大量の水芭蕉を見たことがない。
あきれてしまうほど。
今年は水芭蕉の大豊作らしい。
大豊作とは、私が言っているのだが、
まるで食べ物のような言い方をしてしまった。
適切な表現ではない。
その中に、キヌガサソウや、サンカヨウなどが、
ちらほら――
7月になれば、ワタスゲの終盤のフワフワした綿毛が、
湿地帯全面に浮かぶ。
まさに浮かぶという表現がぴったりの様相となる。
ところで、ワタスゲをご存じの方でも、
その花は知らないかもしれない。
私も知らなかったのだが、自然園のイノマタ氏に、
教えてもらった。
花自体は、たいした驚きはなかった。
イノマタ氏の話しでは、今年は、水芭蕉とワタスゲが、
例年より大量に咲いていると言う。
あまりの感激に、質問してみた。
「今の状態を1とすると、今後いくつになりますか?」
ひかえめに応えてくれたのが、
「100とかになりますね」
ヒエェ~~~~
そして、この園の中で最も高い場所、
標高2020mの頂点に行ってみると、
先日登った、白馬大雪渓の全貌が見えたのである。
そういえば、大雪渓に登っている最中、
「あれっ、あそこに見えるのは、栂池自然園かな?」
と急斜面の中で振り返った感想が、
正しかったことが、くしくも証明されたのだった。


《
白馬大雪渓》
一部、長さ1キロが見えている