昨日、御嶽山の二の池ヒュッテで、自分のことを、 《遺伝子鳩》と呼んでみた。
多くの人間が、年月を越えて、様々な情報を、
子孫に伝えてゆく。
伝書鳩の名をちょいと、お借りしてみた。
伝書鳩は、帰巣本能があるのだが、
人間には、伝えようとする本能があると信じたい。
てなことを、小屋の炬燵の中に足をつっこみ、
うつらうつらしながら、まどろんでいた。
こたつとは、中に豆炭を入れて温めるモノで、
火を熾した小さな饅頭形のマメタンを7つほど入れてある。
その上に布団をかけ、テーブルを置くだけ。
温度調節もでき、12時間はおろか、
24時間ほども暖ったかさをキープしている優れモノ。
二の池ヒュッテは、標高2900mに建っているので、
7月の気温は12度ほど。
初日から、風ビュービュー、雨ジャージャー。
外になんか出られやしない。
普段、小屋の近くには、
雷鳥のヒナがピィピィと歩いているらしいが、
この天気では、雷鳥もそれを見たい私も外出禁止。
炬燵でザックから、取り出したのは、
《野筆》とスケッチブック。
野に出て俳句などをしたためる為に、モンベルが
開発したグッズだ。
すずりに水をたらし、軽く墨を擦る。
「する」は、「擦る」なのか「刷る」なのかなどと考えながら、
目の前の薄暗い小屋の中をスケッチしてゆく。
山小屋とは、〇〇電力が電柱を作ってくれないので、
自家発電。
燃料代を節約する為に、昼間は灯りがとぼしい。
本を読むにも、窓際に寄るか、ヘッドランプの世話になる。
ちょいと絵を描いては、お茶を飲む。
そのうち、薄暗さに眠気がおそってくる。
なんたって大き目の炬燵が、「横たわれ」と誘ってくる。
ちょっとだけヨ
カトちゃんのマネをして、右ひじだけついてみる。
掛け布団の中に、腰までもぐりこむ。
肩までついてみる。
胸までもぐりこむ。
天井のむき出しの梁の節目を数えていたら、
コトン
いつのまにか夢の中にいた。
「担々麺食べますかぁ~」
小屋主の声が夢の中で聞こえる。
そうだった、ここは山の上だ、腹は減る。
しばらくすると、名物の担々麺が湯気をあげながら出された。
外は嵐なのに、山小屋で担々麺!
ジュルジュルジュル
「うまい!」
思わず声がでるほどの一品。
〆には、ご飯を足して、ジュルジュル~
ふたたび眠気がおそってきて、もぐりこむ・・・
夕飯までまだまだたっぷり・・・
その昔、600人の修験者たちを泊めたこともあるという、
ひろ~い小屋の中でも探検しましょうか――